トランプ、米国防費「歴史的増強」の財源はどこにあるのか
トランプは週明け、無駄な海外援助の話題を持ち出し、アメリカは中東に「6兆ドルも使った」「かつてない混乱が残った」としてオバマの外交政策を批判。そのうえ「高速道路や一般道はへこんだまま放置された」と指摘し、インフラ整備への支出を大幅に増やす考えを示した。
トランプが国防費拡大を求めたのを受けて、120人以上の退役軍人や海軍将官から成るグル―プが連名で、議会の指導部やティラーソン、ジェームズ・マティス国防長官、H.R.マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)宛てに書簡を送った。意外だがその内容は、ソフトパワーを強調するもの。「国防に加え、外交と開発に関わる取り組みを拡大・強化することが、国の安全を守るうえで決定的に重要だ」と警告した。
NSA(米国家安全保障局)長官や米サイバー軍初代司令官を歴任したキース・アレクサンダー退役将軍や、オバマ政権でアフガニスタン駐留米軍司令官を務めたジョン・アレン退役大将などを含む同グループは書簡で、マティスが米中央軍(CENTROM)の司令官だった2013年に国務省予算の削減を牽制した発言に言及した。「国務省にしっかり予算を充てなければ、米軍はもっと武器を購入する必要に迫られる」
国土安全保障省は削減の例外
ホワイトハウスは5月までに最終予算を取りまとめたい意向を示したが、トランプが具体的にどの部門の予算を削ろうとしているのかは明らかになっていない。ただ、予算削減を免れそうな機関が1つある──国土安全保障省(DHS)だ。国防総省とともに数十億ドルの追加予算が投入されるとみられ、政府高官はそれをトランプが選挙戦で公約に掲げた「法と秩序」の回復に向けた取り組みの一環と位置付ける。本誌は先週末、編成に22億ドルの費用と5年の歳月がかかるDHSの国境警備隊について、採用条件を緩和する計画を示す内部報告書の存在を明らかにした。
それでも、政権が新たな移民対策を実行に移すうえで、国務省の協力が重要なのに変わりはない。メキシコをはじめとする関係国と不法移民の強制送還で連携し、メキシコ当局の国境警備に対する資金提供を含めた様々な形の援助を行うなど、国境線の治安対策強化で直接的な役割を担うのは国務省だ。
上院外交委員会で委員長を務めたボブ・メネンデス上院議員(民主党・ニュージャージー州選出)は週明け、メキシコやラテンアメリカ諸国に対する対外援助の拡大が絶対に必要だと述べた。
「米政府が安全保障に不可欠な事業にかける費用は、連邦予算の1%にも届かない」と本誌に語ったメネンデスは、そうした事業の一例として、中南米の麻薬密売人やアメリカを標的にした犯罪ネットワークの撲滅に向けて、外国の警察や軍を訓練する取り組みを挙げた。