最新記事

米軍事

トランプ、米国防費「歴史的増強」の財源はどこにあるのか

2017年2月28日(火)18時00分
ジョン・ハドソン、モリー・オトゥール

トランプは週明け、無駄な海外援助の話題を持ち出し、アメリカは中東に「6兆ドルも使った」「かつてない混乱が残った」としてオバマの外交政策を批判。そのうえ「高速道路や一般道はへこんだまま放置された」と指摘し、インフラ整備への支出を大幅に増やす考えを示した。

トランプが国防費拡大を求めたのを受けて、120人以上の退役軍人や海軍将官から成るグル―プが連名で、議会の指導部やティラーソン、ジェームズ・マティス国防長官、H.R.マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)宛てに書簡を送った。意外だがその内容は、ソフトパワーを強調するもの。「国防に加え、外交と開発に関わる取り組みを拡大・強化することが、国の安全を守るうえで決定的に重要だ」と警告した。

NSA(米国家安全保障局)長官や米サイバー軍初代司令官を歴任したキース・アレクサンダー退役将軍や、オバマ政権でアフガニスタン駐留米軍司令官を務めたジョン・アレン退役大将などを含む同グループは書簡で、マティスが米中央軍(CENTROM)の司令官だった2013年に国務省予算の削減を牽制した発言に言及した。「国務省にしっかり予算を充てなければ、米軍はもっと武器を購入する必要に迫られる」

国土安全保障省は削減の例外

ホワイトハウスは5月までに最終予算を取りまとめたい意向を示したが、トランプが具体的にどの部門の予算を削ろうとしているのかは明らかになっていない。ただ、予算削減を免れそうな機関が1つある──国土安全保障省(DHS)だ。国防総省とともに数十億ドルの追加予算が投入されるとみられ、政府高官はそれをトランプが選挙戦で公約に掲げた「法と秩序」の回復に向けた取り組みの一環と位置付ける。本誌は先週末、編成に22億ドルの費用と5年の歳月がかかるDHSの国境警備隊について、採用条件を緩和する計画を示す内部報告書の存在を明らかにした。

それでも、政権が新たな移民対策を実行に移すうえで、国務省の協力が重要なのに変わりはない。メキシコをはじめとする関係国と不法移民の強制送還で連携し、メキシコ当局の国境警備に対する資金提供を含めた様々な形の援助を行うなど、国境線の治安対策強化で直接的な役割を担うのは国務省だ。

上院外交委員会で委員長を務めたボブ・メネンデス上院議員(民主党・ニュージャージー州選出)は週明け、メキシコやラテンアメリカ諸国に対する対外援助の拡大が絶対に必要だと述べた。

「米政府が安全保障に不可欠な事業にかける費用は、連邦予算の1%にも届かない」と本誌に語ったメネンデスは、そうした事業の一例として、中南米の麻薬密売人やアメリカを標的にした犯罪ネットワークの撲滅に向けて、外国の警察や軍を訓練する取り組みを挙げた。

From Foreign Policy Magazine


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中