トランプ、米国防費「歴史的増強」の財源はどこにあるのか
国務省は、トランプから要求されている予算削減の規模についてコメントを避けたが、マーク・トナー報道官代理によれば、国務省は「優先される予算について、ホワイトハウスならびに行政予算管理局と協議しているところ」だという。「国務省は引き続き外交政策に力を注ぎ、アメリカ国民の安全と繁栄を推し進めていく」とトナーは言う。
いずれにせよ、最終的に予算案が承認されるには、上院で60票(5分の3以上)を獲得しなくてはならない。トランプの初の予算案について、多くの民主党議員は激怒している。一方、共和党議員たちは、さらに詳細がわかるまでは様子見のようだ。
民主党議員は、政治的姿勢を問わず、今回の予算案が否決されるのはすでに確実だとして激しく非難し、軍事費増額の必要性を疑問視している(今回の予算案で提案された増額分は、ロシアの総国防費とほぼ同じだ)。アメリカの2017年度の国防費は年間およそ6000億ドルで、世界でダントツのトップ。一方、対外援助と国務省の予算は年間500億ドルだ。
対外援助はお荷物、の嘘
共和党のジョン・マケイン上院軍事委員会委員長(アリゾナ州選出)を筆頭に一部の共和党議員は、国防費を6400億ドルに拡大する独自の予算案を示しながらトランプ案では「少なすぎる」と批判した。「世界中に紛争が広がる今、多少の増額では平和を守れない」
米保守系シンクタンク、ヘリテージ財団の研究者でトランプの政権移行チームに参加したジェームズ・カラファノは、国防総省の予算は「多くの外交使節団を派遣するオバマ政権の目玉政策」で無駄遣いされてきたと指摘、国務省予算の大幅な削減を支持した。
「オバマ政権は、テロリスト予備軍の過激化を阻止する対策から男女平等の実現に至るまで様々な成果を上げたと主張したが、どれほど効果があったかは疑問だ」
同じ共和党でも、リンジー・グラハム上院議員(サウスカロライナ州選出)やジョン・ブーズマン上院議員(アーカンソー州選出)、ケイ・グレンジャー下院議員(テキサス州選出)などのベテラン議員は、対外援助資金に充てる予算確保を強く支持している。
だがトランプは大統領選で繰り返し、米政府による対外援助は無駄だらけだとやり玉に上げた。そのせいか国民の間には根拠のない負担感も募っている。2009年以降、アメリカ人を対象に米連邦予算のうちどれほどの割合が対外援助に充てられていると思うかを尋ねる世論調査を実施してきた米カイザー・ファミリー財団はによると、平均的な回答者は25%程度だった。実際は、実際はイスラエルやエジプトへの軍事支援を含めても1%以下だ。