辣椒(ラージャオ)さんとの出会い――亡命漫画家『嘘つき中国共産党』
中国では何度か危ない目に遭ったが、それでも表現せずにはいられない欲求を抑えがたく、何としても描き続けたいと思ったと語る目には力があった。
彼が描いた中国共産党と戦う理由の中に、「移動の自由」「言論の自由」などがある。
中国共産党の一党支配が終わらない限り、中国に民主が訪れることはなく、真実を言っても逮捕されない日々が来ることはない。
筆者は自分が生きている間に、言論の自由が保証される中国が来ることはないと見極めたので、中国の真相を思い切って書くことを決意した。
彼もまた中国に民主が来るために、故国を捨てででも表現しているのだという。
そして「中国共産党の嘘」の正体を徹底して暴くには、そもそも中国共産党がどのようにして強大化するに至ったのかという「党史」を調べなければならないと思っていたが、それにはとてつもない時間がかかる。そんな中、日中戦争時代の毛沢東に関する遠藤の本の存在を知ったので、一刻も早く会いたかったとくり返した。
中国共産党の嘘を見やすい形に
中国共産党が国家の根幹に関わる大きな嘘をついているのは明らかだ。
筆者は中華人民共和国誕生までの嘘を描き、辣椒さんは建国後および現在の嘘を描いている。その二つがつながれば、中国の嘘の全貌が見えてくるだろう。もちろん彼が描いているのは筆者も知っている嘘ではあるが、しかし、漫画という、しかもこの風刺のきいた手法によって描く効果はひとしおだ。中国の嘘の全貌が、非常に見やすい形で伝わるにちがいない。
ただ、その中国に対して、なぜ日本政府は強いことを言わないのか、なぜ中国が嘘をついていることを示していかないのか。そうすれば中国で虐げられている人々がいつか自由になる日が来るかもしれないというのに、日本は中国に厳しいことを言わないと辣椒さんは嘆く。日本が大好きだが、しかし一方では、そういう日本のあり方を悔しがっている。この視点においても、われわれ二人は共鳴し、理念を共有したのだった。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『完全解読 中国外交戦略の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付 やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。