ジャカルタ州知事選に乗じる政治・社会の混乱とテロに苦悩するインドネシア
2月15日の投票日前に判決が予想されるが、アホックが有罪ならジャカルタ市民、与党が怒るし、無罪ならイスラム急進派、野党勢力が騒動を起こすのは確実とみられるなど、判決結果に関係なくジャカルタには波乱が待ち構えている。そうした波乱が騒乱に発展し、社会秩序が不安定化するのをテロリストや反政府運動組織が虎視眈々と手ぐすねを引いて待っている、というのが現在のジャカルタだ。
そこで問われるのがジョコ・ウィドド大統領の手腕となる。与党闘争民主党は、インドネシアの多数を占める穏健なイスラム教徒や経済活動の重要な役割を担う中国系インドネシア人、地方出身者やキリスト教徒などの支持が強いが、複雑で入り組んだ政治勢力、社会階層、宗教構造からなるインドネシアをどうまとめ、国民を納得させることで噴火直前の火山を「鎮める」のか。
ジャカルタ、そしてインドネシアは年末年始から目が離せない状態となる。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など