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次期米国防長官の異名を「狂犬」にした日本メディアの誤訳

2016年12月20日(火)11時00分
森田浩之(ジャーナリスト)

 こうしたエピソードを考えると、「mad dog」というマティスの異名を「狂犬」と訳すのは適切ではないことが分かる。そもそも米軍のエリート司令官に、理性に欠ける「狂犬」のような人物がいたら、それだけで尋常ではない。ここは「勇猛果敢」や「荒くれ者」といったニュアンスが正しいのだろう。

 ところが日本の多くの新聞は、「狂犬」という直訳を見出しにまで入れてしまった。そこにはトランプが「狂犬」の異名を持つ元軍人を国防長官に起用するのは、据わりがいいという感覚がなかったか。あったとすれば印象操作につながり、メディアが守るべき公平さを欠いていた。

【参考記事】ファーストレディーは才女イヴァンカ?

 トランプが問題の多い大統領になることは、今までの言動から覚悟しなくてはならない。だが、彼の起用する閣僚候補まで一様に色眼鏡で見るのはおかしい。個別にチェックして、問題があれば報じるべきだ。

 メディアの役割は、フェアな批判精神を持って権力を監視する「watchdog(番犬)」であることだ。見境なくほえ立てる「狂犬」になることではない。

[2016年12月20日号掲載]

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