「ソフトトランプ」でも日本はハードな円高に、大統領権限で通商を狙い撃ちか
もともと日本株は、ボラティリティが高いことで知られる。ただ、その高い変動をもたらしている大きな要因は為替。株価にはいろいろな変動要因があるが、最終的には企業業績が左右する。日本企業の業績が円高・円安によって大きく変動するために、株価も大きく振れる。
「トランプショック」によるリスクオフだけでなく、12月の米利上げ期待も低下。トランプ氏はFRB(米連邦準備理事会)を批判していることから、米金融政策の不透明感も加わり、9日の市場でドル/円は、朝方の105円台から一気に101円台まで約4円円高が進行した。
さらに米国が「内向き」政治に変わることで、ドルのリスクプレミアムが低下するとの指摘もある。「米国が世界の警察であることによるドルのプレミアムは、2─3割乗っている。それがはがれ落ちれば、1ドル60円が視界に入る」と、フコクしんらい生命・財務部長の林宏明氏はみる。
ブレグジット(英国のEU欧州連合離脱)は「ハード」になるか、「ソフト」になるかで揺れているが、国民投票で示されたのは内向きの選択。今回の米大統領選でもそれが如実に表れた。
反グローバル、保護主義がはびこる環境は、株式などリスク資産市場にとってネガティブだが、世界的な金利低下で国債での運用も難しい。資金の持って行き場は乏しく、あふれるマネーの逃避先としても、円やスイスフランが志向される場面が多くなりそうだ。
(伊賀大記 編集:田巻一彦)