「ソフトトランプ」でも日本はハードな円高に、大統領権限で通商を狙い撃ちか
通貨安による景気刺激策は、G20声明で排除されている「禁じ手」だ。しかし、米経済もかつてのような強さはない。明示的ではないにせよ、口先介入などを通じて弱いドルを志向する可能性は小さくない。ドル安・円高誘導となるかはともかく、米経済に悪影響を与えるような過度なドル高・円安は容認できないというのは、議会でも賛成を得やすい考えだろう。
日本の対米貿易黒字は1991年の58.4%をピークに徐々に低下し、現在は10%程度。今の「悪役」は対米貿易赤字の5割近くを占める中国だ。しかし、反グローバル主義のトランプ氏が強硬姿勢を強め、為替へのプレッシャーが強まれば、日本や円も「とばっちり」を受ける可能性がある。
ムーディーズ・アナリティクスの分析では、トランプ氏の政策が実施された場合、米国経済を弱め、雇用を減らし、失業率を高めるという結果になった。1)政策の完全実施、2)一部実施、3)議会に阻まれ政策調整──という3つのシミュレーションでは、議会に阻まれるケースがもっとも高い成長率を示した。
「ソフト」なトランプ政策はそれほど悪くないのかもしれないが、「保護主義は結局、米経済の潜在成長率を低め、長期的にダメージを与える」とムーディーズ・アナリティックス・ジャパンのシニア・ディレクター、水野裕二氏は話す。
もし、ドル安が米景気を回復させたとしても、日本にとっては円高の悪影響が、米景気回復効果を相殺してしまうことになる。
円高で最も下げた日本株
トランプ氏の勝利が予想外だったのは、どこの市場でも同じ。だが、アジア市場で最も下落率が大きかったのは、日本株だ。日経平均<.N225>の下げ幅は一時1000円安を超え、終値の下落率も終値で5.36%に達した。日本時間午後3時時点のインドや香港の主要株価の3%台を大きく上回っている。