「ソフトトランプ」でも日本はハードな円高に、大統領権限で通商を狙い撃ちか
11月9日、トランプ新米大統領が誕生すれば日本にとって最大のリスクとなるのは円高だ。過激な政策は議会を通らないとみられ、当面は「ソフト」な政策になるとしても、外交や通商政策の一部は大統領権限でできる。写真はTVスクリーンと株価チャート、フランクフルトで9日撮影(2016年 ロイター)
トランプ新米大統領が誕生すれば日本にとって最大のリスクとなるのは円高だ。過激な政策は議会を通らないとみられ、当面は「ソフト」な政策になるとしても、外交や通商政策の一部は大統領権限でできる。
日本の経常黒字や円がターゲットになるとの市場の警戒感は強い。米利上げの予想確率も低下しており、円高圧力が日本経済にのしかかりそうだ。
議会が壁となる「ハードな政策」
トランプ氏が選挙期間中に掲げた大型減税や財政出動は、議会の承認が必要となる。大統領選と同時に行われた米議会選では、両院とも共和党が制する見通しだが、トランプ氏の政策に対しては共和党といえども議員の反対が強く、「ハード」なトランプ政策を実現できる可能性は低い。
しかし、外交や通商政策は別だ。一部の政策は、大統領権限だけで行うことができる。追加的な関税障壁や非関税障壁の設置は議会が受け入れない見通しだが、新大統領が不公正貿易への対抗姿勢や為替の是正などを強く推してくると警戒する市場関係者は多い。
「大統領に当選して何も政策を打ち出せないのでは、選挙民に面子が立たない。大統領権限でできる通商政策に絞って政策を進めてくる可能性が大きく、為替はそのターゲットにされやすい」と三井住友銀行チーフ・マーケット・エコノミストの森谷亨氏はみる。
日本は米国の為替操作国には指定されていないが、今年4月新たに設定された「監視リスト」には中国、ドイツ、韓国、台湾とともに入った。経常収支の対米黒字が大きいと指摘されたためだ。2016年度上期の経常黒字は、8年半ぶりの高水準。為替に圧力をかけながら、この点の是正を求めてくる可能性がある。
保護主義は日米経済に悪影響
米経済はグローバル化が進み、いまや国内総生産(GDP)に占める製造業の比率は、12%程度。しかし、今年前半みられたようにドル高は企業業績の減速などを通じて米経済に小さくないダメージを与える。