最新記事

2016米大統領選

「ソフトトランプ」でも日本はハードな円高に、大統領権限で通商を狙い撃ちか

2016年11月9日(水)19時38分

11月9日、トランプ新米大統領が誕生すれば日本にとって最大のリスクとなるのは円高だ。過激な政策は議会を通らないとみられ、当面は「ソフト」な政策になるとしても、外交や通商政策の一部は大統領権限でできる。写真はTVスクリーンと株価チャート、フランクフルトで9日撮影(2016年 ロイター)

 トランプ新米大統領が誕生すれば日本にとって最大のリスクとなるのは円高だ。過激な政策は議会を通らないとみられ、当面は「ソフト」な政策になるとしても、外交や通商政策の一部は大統領権限でできる。

 日本の経常黒字や円がターゲットになるとの市場の警戒感は強い。米利上げの予想確率も低下しており、円高圧力が日本経済にのしかかりそうだ。

議会が壁となる「ハードな政策」

 トランプ氏が選挙期間中に掲げた大型減税や財政出動は、議会の承認が必要となる。大統領選と同時に行われた米議会選では、両院とも共和党が制する見通しだが、トランプ氏の政策に対しては共和党といえども議員の反対が強く、「ハード」なトランプ政策を実現できる可能性は低い。

 しかし、外交や通商政策は別だ。一部の政策は、大統領権限だけで行うことができる。追加的な関税障壁や非関税障壁の設置は議会が受け入れない見通しだが、新大統領が不公正貿易への対抗姿勢や為替の是正などを強く推してくると警戒する市場関係者は多い。

 「大統領に当選して何も政策を打ち出せないのでは、選挙民に面子が立たない。大統領権限でできる通商政策に絞って政策を進めてくる可能性が大きく、為替はそのターゲットにされやすい」と三井住友銀行チーフ・マーケット・エコノミストの森谷亨氏はみる。

 日本は米国の為替操作国には指定されていないが、今年4月新たに設定された「監視リスト」には中国、ドイツ、韓国、台湾とともに入った。経常収支の対米黒字が大きいと指摘されたためだ。2016年度上期の経常黒字は、8年半ぶりの高水準。為替に圧力をかけながら、この点の是正を求めてくる可能性がある。

保護主義は日米経済に悪影響

 米経済はグローバル化が進み、いまや国内総生産(GDP)に占める製造業の比率は、12%程度。しかし、今年前半みられたようにドル高は企業業績の減速などを通じて米経済に小さくないダメージを与える。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など

ワールド

アングル:失言や違法捜査、米司法省でミス連鎖 トラ

ワールド

アングル:反攻強めるミャンマー国軍、徴兵制やドロー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 5
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 6
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 7
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 8
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中