トランプ氏当選と中国――尖閣問題は?
中には、南シナ海問題や尖閣問題に関して、トランプ氏に行なった取材を例にとっている報道もある。
たとえば、11月9日の「環球時報」は、今年3月21日に「ワシントンポスト」がトランプ氏を取材した際に以下のような質問をしたとして、その回答を特別に大きく扱っている。
記者:あなたは中国と南シナ海の問題に関して、どう見ていますか?中国は何をしようとしていると思いますか?われわれ(アメリカ)は、どのように行動すればいいと思いますか?たとえば、貿易面において(中国に)圧力を加えれば、彼らは南シナ海から撤退すると思いますか?
トランプ:アメリカが中国の行動のために第三次世界大戦を始めるとは私は思わない。私は中国のことは非常に分かっている。中国とは、かなりうまい商売をやったことがある。アメリカは中国に対して非常に大きな貿易面での影響力を持っている。だからその面で中国に圧力を掛ければ、中国から譲歩を引き出すことができる。
記者:もし中国が、日本人が言うところの尖閣列島、すなわち釣魚島を占領したとすれば、アメリカはどう出ますか?
トランプ:私がどうするかということに関して、あなたに言いたくはない。
このような、執拗とも言えるほど食い下がった質問が、トランプ氏に向けられていたことを中国共産党系列の新聞が報道していることもあわせて考えると、「トランプが当選すれば、南シナ海や東シナ海問題などへの介入を減らすだろう」というのが、中国の大方の見解だと言っていいだろう。
環球時報はさらに、11月13日から18日にかけて、中国の昆明で、中米両陸軍の共同軍事演習(人道主義的災害救助合同演習)が行われることを特記し、あたかも「中米両軍は仲がいいのだ」というのをアピールしている。
東南アジア諸国を着々と落としていった中国
ただ、そううまくはいかないだろうことも、中国は予測している。それに備えて、中国が今年、力を入れてきたのは東南アジア諸国を、つぎつぎと手なずけていくことだった。
これに関しては、すでに本コラムで以下のような状況をご紹介してきたので、重複は避ける。
●「チャイナマネーが「国際秩序」を買う――ASEAN外相会議一致困難」(ラオスとカンボジアに関して)
●「中国を選んだフィリピンのドゥテルテ大統領――訪中決定」
●「中比首脳会談――フィリピン、漁夫の利か?」
●「スー・チー氏の全方位外交と中国の戦略」