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2016米大統領選

トランプ氏当選と中国――尖閣問題は?

2016年11月10日(木)16時35分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 やはり「新型(二大)大国関係」の思想が基本にある。

 そして長すぎる美辞麗句の中に、それとなく習近平氏の(中国を高く位置づけた、やや自信過剰な)喜びがにじみでているように感ぜられる。

 11月7日付の本コラム「中国は米大統領選と中国に与える影響をどう見ているのか?」でも書いたように、短期的には(数年内くらいなら)、中国にとってはトランプ氏が当選した方が有利なのである。

 もちろん経済貿易関係では多少の痛手を受けるだろうし、金融リスクも抱えることになるだろう。また、中共の「使命」を帯びた「移民」をアメリカに送り込み、アメリカの人口構成まで変えてしまおうとする「戦略」は制限を受けることになる可能性もはらんでいる。

 しかし、軍事外交的な中国包囲網という観点からすると、中国は「しめた!」と思っている側面を否めない。

 今回は特に、南シナ海問題と尖閣諸島問題に焦点を当てて、分析を試みる。

南シナ海や東シナ海問題に関して

 もちろん中国政府の正式な見解としては表明していないが、しかし、たとえば中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」など多くの中国メディアは、学者の見解という形を取って、トランプ政権になれば、オバマ政権の時のような軍事外交的な対中包囲網形成の度合いが下がるだろう踏んでいる。

 その理由にはいくつかある。

 まず、トランプ氏が選挙演説中に「アメリカは世界の警察をやめる」と言っているからだ。これは「他国への余計な介入をやめる」という意味になる。

 また、「日本や韓国などに配備している米軍を見直す(他国に駐在しているアメリカ軍を引き揚げるか、あるいは、もし防衛してほしければ、もっと駐留のための経費を当該国が負担しろ)」といった趣旨のことも言っている。これはすなわち、オバマ政権のアジア回帰、リバランスを見直すということにつながる。

 トランプ氏は「アメリカ・ファースト(アメリカ第一主義)」という言葉に見られるように、他国への介入のためにアメリカ国民の膨大な税金を注ぐべきではなく、アメリカの国民を裕福にさせることが最優先で、最大の課題だ。

 さらに、トランプ氏はTPPから脱退するとさえ明言しているので、ましていわんや、釣魚島(尖閣諸島)や南シナ海問題などに関して中国と必死で戦おうなどとするはずがない、と中国側メディアは分析している。

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