トランプ氏当選と中国――尖閣問題は?
これから明らかなように、「ラオス、カンボジア、フィリピン、ミャンマー」は、すでに手なずけたと言っていいだろう。さらにまだマレーシアのことをご紹介していない。
実は「11月3日、マレーシアのナジブ首相は習近平国家主席と北京の釣魚台国賓館で会見していた」のである。それも、南シナ海の領有権問題や防衛関連での協力において両国関係をさらに強化させることで合意し、中国が推し進める「一帯一路」構想を称賛して、中国から多額の支援を取り付けたのだ。
南シナ海に関しては、7月に出されたオランダ・ハーグの仲裁裁判所の判決など、どこ吹く風。中国は完全に判決を無視し、「実」を取って、「問題があれば関係する両国間でのみ話し合いを通して解決する」という言質を、チャイナ・マネーの交換条件として取り付けている。
中国にとってすでに、南シナ海問題は「安泰」なのである。インドネシアなど、どこかの根性のある一国が抗議を申し出てきても、アメリカの強力な軍事的介入でもない限り怖くない。
尖閣諸島問題
となれば、あとは日本だ。東シナ海のガス田共同開発は2008年に合意したものの、北京オリンピック成功のために奔走した当時の胡錦濤国家主席は「日本に心を売った売国奴」「あれは中国の領海だ」として罵られてネットが炎上し、共同開発を断念した。日本は約束を守っているが、中国は炎上したネットの意見を採り入れて、徐々に日本に無断で開発を進めている。それに対してアメリカが強い姿勢に出たかというと、これまででさえ、そうではない。
まして尖閣諸島となると、アメリカは1970年代初期のニクソン政権時代に「尖閣諸島の領有権に関しては、アメリカはどちらの側にも立たない」と宣言して、こんにちに至っている。2012年9月と2013年1月に出されたアメリカ議会調査局リポート(CRS)は「安保条約第5条で防衛の対象となっているが、しかし尖閣諸島が武力的に侵害されたときには、まず日本が先に戦って(primary responsibility)、それを見た上でアメリカ議会あるいは短期的には大統領が米軍を派遣するか否かを決定する」という趣旨のことが書いてある。これをオバマ大統領は何度も習近平国家主席に言っていたし、中国はニクソン政権時代の宣言と、それを追認したこのCRSリポートを盾に、「だからアメリカは、尖閣諸島の領有権は日本にあるとは言っていない」と主張し、強気の態度に出てきたのだ。