最新記事

中台関係

「習近平・洪秀柱」国共党首会談――親中・国民党に逆効果

2016年11月4日(金)08時19分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

台湾・国民党の洪秀柱主席の親中姿勢に抗議する台湾人 Tyrone Siu-REUTERS

 11月1日、習近平総書記と台湾、国民党の洪秀柱主席が対談した。北京側の洪主席に対する扱いはそっけなく、「和平協議」は国民党には逆効果だった。「平和とは恐怖政治下の平和」と台湾民意の反発も招いている。

見くびられている台湾の親中・国民党

 11月1日午後、習近平総書記と洪秀柱主席は、人民大会堂の「福建の間」の前で対面した。 台湾、香港を中心として活動する「中國評論通訊社」によれば、二人の面談は次のような言葉から始まったという。

 洪秀柱:総書記、こんにちは。

 習近平:主席、こんにちは。ようこそ、いらっしゃいました。

 洪秀柱:ありがとうございます。

 つまり、二人は「二つの国家」ではなく、「一つの国家」の中の「二つの党」の代表として会ったことになる。

 2015年11月7日に習近平国家主席と当時の馬英九総統がシンガポールで中台トップ会談を行ったときは、馬英九氏が総統であったことから、「一つの中国」を表すために、互いに「習先生」「馬先生」などと、「先生」という敬称で呼び合った。

 今回は、洪秀柱氏が野党・国民党の党首でしかないことから、各党のトップの呼称で互いを呼ぶことにしたようだ。

 2人は20秒間ほど握手して、左右に広がっている記者に平等にサービスしたあと、福建の間に入っていった。

 その時の様子は、中央テレビ局CCTVで報道されたが、何よりも注目すべきは、「習近平・洪秀柱」の二人だけの対談は行なわれず、飾り付けのない(中間に花さえ飾ってない)テーブルに、大陸側対台湾側が「7人対7人」で向き合って話し合っただけだったということだ。

 2005年4月29日に台湾の国民党の連戦主席(当時)が胡錦濤総書記(当時)と会った時には、1945年以来60年ぶりの国共両党首の会談として、全中国をあげての熱狂的な歓迎をしたものである。もちろん、両者は、それぞれソファーに座って(随行者は脇に座った形で)「二人の会談」を人民大会堂でおこなった。「胡連会談」は何種類かの分厚い写真集にもなったほどだ。

 このとき、連戦主席が、なぜ訪中の道を選んだかというと、二度にわたって台湾の総統選に敗れたからで、「連戦連敗」と揶揄されたものだ。民進党に負けた国民党は、「大陸への接近」を重視することによって、民進党との差別化を行い、国民党の勢力を挽回しようとしたのである。

 その国民党、いま再び「親中度」を激化させることによって、台湾の民意を惹きつけ、次の選挙を有利に運ぼうとしているが、それは台湾国民にとって逆効果であるだけでなく、北京側からも「見くびられている」現状を招いている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

商船三井の今期、純利益を500億円上方修正 市場予

ビジネス

午前の日経平均は続伸、米株高の流れを好感 徐々に模

ワールド

トランプ氏「BRICS通貨つくるな」、対応次第で1

ワールド

米首都の空中衝突、旅客機のブラックボックス回収 6
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 10
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中