「ホワイト・ヘルメット」をめぐる賛否。彼らは何者なのか?
「反体制派」的な色合いが強いホワイト・ヘルメットの言動
ホワイト・ヘルメットの支援国は、シリア政府の正統性を否定し、その退陣をめざして干渉を続けてきた。2012年にはカタールでのシリア国民連合結成を後押しし、「シリア国民唯一の正統な代表」として承認、この組織がシリア国内での支持獲得に失敗し、内部抗争で弱体化すると、今度はシャーム・ファトフ戦線を含む「反体制派」を直接間接に後援した。さらに、イスラーム国が「国際社会最大の脅威」として台頭すると、有志連合としてシリア領内を空爆、米国、英国、トルコは地上部隊を潜入させた。
欧米諸国のこうした多様な「反体制派」支援を踏まえると、ホワイト・ヘルメットがその対シリア干渉政策の一環として位置づけられていたとしても不思議ではない。事実、ホワイト・ヘルメットの言動は「反体制派」的な色合いが強い。彼らは連日、インターネットを通じて活動現場の写真や映像を公開している。だが、それらはいずれもロシア・シリア両軍の攻撃の被害者を撮ったもので、紛争被害者の約3分の1以上を占めるシリア軍兵士や親政権民兵を救出するデータが公開されることはない。
また、ホワイト・ヘルメットの活動地域は「反体制派」が支配する「解放区」に限定されている。その理由に関して、公式ホームページでは以下の通り弁明されている。
「政権側支配地域での活動は許可されていない。我々が市民に与える希望が、市民の抵抗を手助けするというだけの理由で、政権は私たちを殺そうとする。政権側支配地域でも我々を求める声がある。しかし、我々が助けようとすると、政権軍が撃ってくる。もし許されれば、シリア全土ですべての人々に奉仕したい」。
しかし、こうした言葉とは裏腹に、ファトフ軍の広報ビデオに登場するホワイト・ヘルメットのボランティアは「シャッビーハ(政権支持者)の遺体はゴミ箱に棄てる」と主張している。しかも、彼らがどのように「解放区」での活動を許可されているのかは実は明らかではない。
「反体制派」がさまざまな武装集団・戦闘員の寄り合い所帯であることは周知の通りだ。アレッポ市東部で籠城を続ける「アレッポ・ファトフ軍」、イドリブ県、ハマー県北部、アレッポ県西部を支配する「ファトフ軍」、トルコ軍とともにアレッポ県北部でイスラーム国と西クルディスタン移行期民政局人民防衛部隊(YPG)主導のシリア民主軍双方と対峙する「ハワール・キッリス作戦司令室」は、シャーム・ファトフ戦線、シャーム自由人イスラーム運動といったアル=カーイダ系のイスラーム過激派、ヌールッディーン・ザンキー運動やムジャーヒディーン軍といった「穏健な反体制派」と目される武装集団、そして世界中から参集した外国人戦闘員によって構成されている。
ホワイト・ヘルメットは、「解放区」の自治を担うとされる「地元評議会」やこれらの武装集団との折衝を通じて活動地域を拡大したと主張する。だが、群雄割拠の状態にある「解放区」で、誰からも攻撃を受けずに活動できるのは、ホワイト・ヘルメットがイスラーム過激派や外国人戦闘員とさえも協力・相互依存関係にあるためだ、との解釈も成り立つ。