フィリピン、ドゥテルテ大統領が仕掛ける麻薬戦争「殺害リスト」に高まる懸念
10月7日、マニラの輪タク運転手、ネプタリ・セレスティーノさんの死をめぐっては、警察と家族の主張は異なるが、どちらが正しいにせよ、彼の命はそう長くなかったようだ。麻薬容疑者の「要注意リスト」に名前が挙がっていたからだ。写真は棺に入ったセレスティーノさんの遺体を見つめる彼の妻、ザンディさん。マニラで9月15日撮影(2016年 ロイター/Romeo Ranoco)
マニラの輪タク運転手、ネプタリ・セレスティーノさんの死をめぐっては、2通りの主張がある。フィリピン警察は、9月12日におとり捜査を進めていた私服警察官に対してセレスティーノさんが発砲してきたため、警察官らが反撃したと説明している。
一方、セレステイーノさんの家族は、警察官が彼らの粗末な家に押し入り、丸腰のセレスティーノさんを追い詰めて、10代の息子たちの面前で射殺したと主張する。
どちらが正しいにせよ、セレスティーノさんの命はそう長くなかったようだ。というのも、彼が暮らす首都マニラの東側にある騒々しく車通りの多いパラティウ地区で、警察が地元の有力者らの協力を得て作成した麻薬容疑者の「要注意リスト」に彼の名前が挙がっていたからだ。
ドゥテルテ大統領が6月30日に就任して以来、3600人以上の死者を出すに至った「麻薬戦争」において下働き役を務めているのが、警察による容疑者リスト作成を支援するそうした地元の人々である。
ロナルド・デラロサ国家警察長官によれば、警察によって射殺された1377人の大半はこのリストに含まれているという。残りの2275人の犠牲者は、人権活動家によればほとんどが自警団によって殺されているというが、このリストに掲載されているかどうかは不明だ。
この麻薬撲滅作戦の旗を振っているのはドゥテルテ大統領自身である。先月30日、彼はまるで自分をヒトラーになぞらえるかのように、「(フィリピン国内の麻薬中毒者300万人を)抹殺できたら幸せだろう」と述べた。だがこの作戦の効率は、国内のバランガイ、つまり地区や村における最底辺の地元職員らにかかっている。
「彼らはこの戦いの最前線にいる」とデラロサ長官はロイターに語った。「彼らは、自分のバランガイにいる麻薬常用者や密売人を特定できる。全員の顔を知っている」
<バイクに乗った暗殺者>
地元警察や、住民、バランガイ職員へのインタビューを通じて、この麻薬撲滅という「聖戦」の仕組みが明らかになった。高い支持率を誇るドゥテルテ大統領は、世界的な非難に直面しつつも、この作戦を来年6月まで続けると公約している。
警察によれば、容疑者リストの作成にあたっては、「キャプテン」と呼ばれるバランガイの首長が役に立っているという。
マリカー・アシロ・ビベロ氏は、マニラのバランガイの1つ、人口約14万5000人のピナグブハタンのキャプテンを務めており、ドゥテルテ大統領が率いる麻薬撲滅作戦の熱心な支持者だ。