フィリピン、ドゥテルテ大統領が仕掛ける麻薬戦争「殺害リスト」に高まる懸念
「麻薬戦争は正しい」と彼女は言う。「犯罪は減っているし、更生したいと思っている人が特定される」
その前の晩、オートバイに乗った暗殺者が、同バランガイの容疑者リストで「密売人」と指定されている男性2人を殺害した、とビベロ氏は言う。彼女は、犠牲者の家族には同情するが、2人の死については責任を感じていないという。
このリストに人々の名を掲載する目的は、「彼らを殺害する、あるいは警察又は当局に彼らの殺害を依頼すること」ではない、とビベロ氏は言う。「目的は、彼らを導き、彼らの生活をもっとよい方向へと向けることで、殺すことではない」
リストに名前が掲載された人々は、殺される可能性が高くなるのかとの質問に対して、同氏は「そうは思わない」と回答した。
ロイターは、プリントアウトされたピナグブハタン地区の容疑者リストを見たが、そこには323人の麻薬常用者や密売容疑者が記載されていた。「自首」と呼ばれる手続を通じて、自分が麻薬常用者であることを警察に申し出るためにバランガイの事務所にすでに出頭した人々もいたので、そのリストは長大なものになっていた。
<地域の中心的役割>
バランガイの起源は16世紀のスペイン人来航以前までさかのぼる。その規模は、マニラでは人口稠密な街路2本だけで構成されることもあれば、郊外では何マイルにもわたって広がっていることもある。
各バランガイにはキャプテンと6人のカガワッド(評議員)がいる。カガワッドは選挙で選ばれるが、不正が告発されることも多い。フィリピンにおけるもっと高い地位と同じように、バランガイのキャプテンの地位も、同族のあいだで受け継がれることが多い。
バランガイの事務所はコミュニティの中心部にあり、どんな日でも、その廊下はいわゆる「決裁」を求める人々でごった返している。つまり、住宅の建設、企業設立、就職、子どもの地元の学校への入学といった目的のための書類にキャプテンのサインが必要なのだ。
11年にわたってパラティウ地区のキャプテンを務めていたエリベルト・ゲバラ氏は、「人々は以前よりも私たちを頼りにしており、迅速に対応するよう求められている」と話す。彼は現在、キャプテンを継いだ彼の妻を補佐している。