最新記事

医療

人類が完全なる人工心臓を手にする日はどこまで近づいた?

2016年10月8日(土)17時51分
ケイト・ローレンス ReadWrite[日本版]編集部

重症心不全で心臓のポンプ機能を置き換えることが必要な患者はアメリカで数万人、日本でも数千人と言われている。(c) ReadWrite[日本版]編集部

 我々は人工股関節置換や補聴器などの人工物の移植によって人々の健康をより増進させる時代を生きている。

 フランスの企業 Carmatは、人工心臓の開発に15年間取り組んでいる。この人工心臓は、末期の心臓病を患い、手術をしなければ余命2週間もない人たちの心臓を丸ごと取り換えることのできる装置である。つまり、完全埋め込み型全置換型の人工心臓だ。彼らは2013年に臨床実験を開始している。

 先日、彼らはヨーロッパでの認証を受けるため、2017年に2度目の挑戦をおこなうと発表した。Carmatの人工心臓は、末期の心不全の患者が移植手術待ちの間をつなぐために使う一時的なものを目標としているのではない。ドナーを待つ期間を延長させることはもちろん、患者の退院やさらには職場復帰さえ可能にすることを目指している点で他社のデバイスとは異なっている。

どのように動作するのか

 Carmatの設計では2つの心室がそれぞれ皮膜に隔てられており、片側は作動液で満たされている。モーターポンプにより作動液が心室から出たり入ったりし、皮膜を動かし血液を循環させる仕組みだ。血液に触れる面はウシの心臓を覆う膜から採取された組織でできており、デバイス自体は生体適合性のあるものにしている。

 Carmatの人工心臓はウシの心臓組織から作られた弁も採用しており、昇圧を検知するセンサーも組み込まれている。その情報は内部コントロールシステムに送られ、患者が運動したときなど血流の需要の高まりに応えて流量をコントロールする。

 人工心臓は動力源、モニター設備、病院のコントロールシステムといった外部システムと接続されており、術後の期間や通院中、また退院するときに身に着けられる動力源兼コミュニケーションシステムとして機能する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 7
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中