現代の「日本のコンスティテューション」とはなにか~宇野重規×山本一郎対談(2)
マイノリティが出てくる社会になったほうが良い
山本:都知事選には出馬しませんでしたが、蓮舫さんは、それこそ台湾から帰化されたということをベースに、自らに何が出来るかということを、かなり考えて来られたと思うんです。でも、結局は「浮動票が取れる人」というところで終わってしまう部分があって、「前回より60万票も減ったじゃねえか」みたいに票数だけで見られてしまうのは、もったいないことだなと。
宇野:蓮舫さんが、自分のオリジンを自分の言葉で表現出来るようになると、日本の政治文化は一歩前進すると思いますね。「台湾出身の親を持っている私が日本のリーダーになれる。これが日本の21世紀の姿だ」と言い切れてこそ、魅力があるんですけどね。
沖縄問題であるとか、アイヌ問題とかを引き受けて、色々あったけれども、今はこういう方向でなんとか解決しようとしていると。それをもし示せれば、正々堂々と、中国に対してチベット問題を批判できるわけですよ。
山本:それこそ、もっと色んな国の人達が日本に帰化して議員になったらいいと思います。もちろん、いろんな摩擦も起きるし、ヘイトもあるかもしれませんけど、それこそ、沖縄、北海道、あるいは日本に定住し日本で暮らすことを決めた、ベトナムやインドやロシアその他、マイノリティの人達がどんどん出てくる社会になったほうが良いはずなんです。
宇野:その人達が、これが「日本のコンスティテューションだ」と言える日が来れば、世界に打って出られますけどね。
山本:そうしたいですけどね。
宇野:そうしていかなければいけないと思います。
宇野重規(うの しげき)
1967年東京都生まれ。東京大学法学部卒業、東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。東京大学社会科学研究所准教授を経て、2011年より同教授(政治思想史、政治学史)。著書に『政治哲学へ――現代フランスとの対話』(東京大学出版会、渋沢・クローデル賞ルイ・ヴィトン特別賞)、『トクヴィル 平等と不平等の理論家』(講談社、サントリー学芸賞)、『〈私〉時代のデモクラシー』(岩波新書)、共編著に『希望学』(東京大学出版会)など。
山本一郎(やまもと いちろう)
1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる。統計処理を用いた投資システム構築や社会調査を専門とし、東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員、東北楽天ゴールデンイーグルス育成・故障データアドバイザーなど現任。東京大学と慶應義塾大学とで組成される「政策シンクネット」の高齢社会研究プロジェクト「首都圏2030」の研究マネージメントを行うなど、社会保障問題や投票行動分析に取り組む。著書に『ニッポンの個人情報 「個人を特定する情報が個人情報である」と信じているすべての方へ』(翔泳社)、『読書で賢く生きる。』(ベスト新書)ほか。
『保守主義とは何か――反フランス革命から現代日本まで』
宇野重規
中公新書