「加工肉に発がん性」WHO発表が招いた混乱の舞台裏
ストライフ氏は「正当な理由により、研究について最も知っている人々は、それまでにその研究にかかわってきた人々だとの強い信念がIARCにはある」と話した。
ストライフ氏はIARCの規則上、「筆者や関連のある同僚」は自らが発表した研究について直接評価することはできないと述べた。そして、「擁護などが許容されない」環境下で、20人から30人が議論に参加していることから、中立性が担保されていると話した。
タローン氏はロイターの取材に対し、全ての専門家が分離され、独立しているとするIARCの前提は「反科学的とは言わないものの、ナイーブだ」と述べた。「利己心や評判、出世主義に基づく先入観の問題がないと主張するのは馬鹿げている。邪悪な動機とは全く関係ない。それは単に人間の本能だ」
タローン氏や他の批評家は、IARCが潜在的な利害対立の対処の仕方で首尾一貫していないと指摘し、携帯電話から放出される放射線の研究をその一例に挙げた。
IARCは2011年6月、携帯電話からの放射線が「おそらくがんを誘発する」と結論づけた。それは、携帯電話を、鉛とクロロホルムと同じカテゴリーに位置づけるものだった。
赤肉の評価
IARCの研究グループの会合には、「関連性があり、科学的な信用のある」オブザーバーが招待された。しかし、彼らは守秘義務を負わされ、議事進行について議論してはならないことになっていた。ストライフ氏は、彼らの反対意見や議論が承諾なしに外部に報じられないことによって、科学者たちが率直に話せるようになると語る。
2015年に赤肉・加工肉の研究グループにオブザーバーとして招待された食物と動物の専門家は、ロイターの取材に匿名で応じ、科学的な証拠を審査する専門家パネルが、あたかも特定の結果を狙っているようだったと主張する。
この評価で、IARCは、リスクではなく、その危険性について評価するという通常の権限を超えてしまった。IARCは、赤肉・加工肉製品を食べるリスクについて具体的な警告を出した。
例えば、加工肉を毎日50グラム食べると、結腸がんを発達させるリスクが18%増えるとIARCは指摘。前述のオブザーバーはロイターの取材に対し、これらのデータが「一晩でどこからともなくやってきた」ように見えると話した。
オブザーバーは「科学は高い水準の厳粛さをもって審査されると期待していた。しかし10日過ぎて、科学的な視点からみて、私は本当に大変なショックを受けた」と話した。