最新記事

中国経済

中国の鉄鋼生産、供給過剰解消までの長い道

地方政府は大量の失業者が出る可能性と鉄鋼メーカーの債務に脅えて「ゾンビ製鉄所」を支える

2016年4月14日(木)18時40分

4月11日、中国の鉄鋼メーカーが国内の需要低迷を背景に安い鉄鋼を大量に輸出、海外メーカーを脅かしている。写真は大連の鉄鋼工場で3月撮影(2016年 ロイター/CHINA DAILY)

 中国の鉄鋼メーカーが国内の需要低迷を背景に安い鉄鋼を大量に輸出、海外メーカーを脅かしている。国際社会は中国政府に余剰生産能力の削減を求めているが、共産党は社会不安を恐れて対策に及び腰で、削減には長年を要する可能性がある。

 共産党指導部に近い筋は「(製鉄所の)閉鎖は一日にして成らず。(社会の)安定が最優先課題だ」と述べた。

 景気減速で多くの鉄鋼メーカーが多額の赤字を出し、輸出に活路を見出している。2015年の鉄鋼輸出は過去最大に上り、世界の鉄鋼価格が数十年ぶりの安値に下落する主因となった。

 インド鉄鋼大手タタ・スチールは、中国製を含む安い輸入品の大量流入が原因で、英事業の一部売却を決めた。

 ドイツでは4万人を超える鉄鋼労働者が11日、中国からの輸入製品安売りなどに抗議する街頭デモを行った。

 クリントン前米国務長官は同日、「中国がわが国の市場に安い製品をダンピング(不当廉売)してルールを破るなら、責めを負わせる」と、批判の声を強めた。

悪循環

 公式データによると中国の鉄鋼生産能力は年間11億トンだが、アナリストの推計では、あと1億トンが違法生産されている。

 公式統計では、余剰生産能力は年間3億─4億トンに上り、昨年の輸出は過去最大の1億1000万トンと、英国の年間鉄鋼生産量の約10倍に達した。

 余剰生産能力の大半は、2009年に政府が実施した景気対策で鉄鋼需要が急増した結果、生まれたものだ。

 中国は2月、5年以内に1億─1億5000万トン分の古い生産施設を閉鎖すると宣言。しかし政府は失業と社会不安を最低限に抑えたい意向で、生産能力は高止まりしそうだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中