トランプ独走態勢が崩れ、複雑化する共和党予備選
ウィスコンシンの敗北で、予備選でトランプが代議員数の過半数を獲得する可能性は低くなった
複雑化する党内抗争 ウィスコンシンで勝利したクルーズだが、「本選で勝てる候補」とはまったく考えられていない Jim Young-REUTERS
今週、中部のウィスコンシン州で行われた予備選では、事前の予想通りとはいえ、民主、共和両党ともに予備選レースのトップを走る候補が敗北するという結果になった。これが様々な波紋を投げかけている。
まず民主党ではバーニー・サンダース候補が56.5%を獲得し、43.1%の得票率だったヒラリー・クリントン候補に対して2桁の差をつけて勝利した。代議員数ではヒラリー優位に揺るぎはないが、直近で行われた8州の予備選のうち7州で勝利するなど、サンダースには勢いが出てきている。
こうした結果を受けてアメリカメディアは、サンダースが勢いをさらに付けて、この先のニューヨーク州予備選(4月19日)でも勝利するようなら、ヒラリー支持を表明しているスーパー代議員(各州の党幹部、議員など)の中にも動揺が生まれて「大逆転」もあり得るなどと「煽る」報道が出始めている。
だが世論調査では、ニューヨークだけでなく、同じく大票田のペンシルベニアやカリフォルニアでも、ヒラリーは2桁の差でサンダースを圧倒しているし、スーパー代議員の翻意というのは非現実的だ。その意味で、今回のウィスコンシンにおけるサンダースの勝利は、選挙戦をもう少し長引かせて「民主党に対するメディアの注目」を引っ張る効果ぐらいしかないという見方が妥当だろう。
その一方で、気になる点もある。ここへきて勢い付いたサンダースは「民主社会主義者」の本領を発揮するかのように、大企業批判を続けている。例えばアップルに対しては「中国での生産を止めて米国内での生産に切り替えよ」と主張、さらには90年代以降ずっと民主党の「グローバル経済戦略」と連携してきたGE(ジェネラル・エレクトリック)に対しては「米国内雇用を流出させた犯人」だとして批判を強めている。
こうした言動は、左派ポピュリズムだと言ってしまえば、それまでだが、例えば各選挙区での議会下院の民主党議員の選挙戦などには影響を与える可能性がある。そうした主張で当選した議員が増えると中道実務派的な政権が出来た場合には、「抵抗勢力化」することも考えられるからだ。