トランプ独走態勢が崩れ、複雑化する共和党予備選
一方で、共和党の方はますます「異常事態」となってきた。テッド・クルーズ候補の勝利は下馬評通りだが、問題は得票率だ。クルーズ48.3%、トランプ35.1%、ケーシック14.1%という数字は、明らかにトランプ「失速」の兆候を示している。
また、今回の敗北で、ドナルド・トランプ候補としては「7月の党大会以前に代議員数の過半数となる『マジックナンバー1237』に到達」する可能性が少なくなってきた。
純粋に数字の問題として見ても、トランプは、以降の予備選で残る代議員数の55%を獲得しないと「マジックナンバー」には届かないが、一部に「勝者総取りでない」州があること、ニューヨーク、ペンシルベニア、カリフォルニア、ニュージャージーなどを全勝することはほぼ不可能であることを考えると、余程の「勢いの再建」ができないと難しい。
共和党では「トランプが1位だが過半数は取れない」のが濃厚になってきた中で、党大会の現場で「代議員の自由投票」による候補指名というドラマが起きる可能性が濃厚となってきた。なおこうした「自由投票による候補指名」については、今回は「コンテステッド・コンベンション[contested convention]」という言い方が主流になって来ている。
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こうした動きに対して、トランプ陣営は激しく反発しているが、その陣営内で不協和音が生じているという報道もある。予備選も最終段階を迎え、「そろそろ威風堂々と大統領らしい言動に変えた方がいい」という意向がトランプの家族の側からは出ている一方で、選対の方では「暴言を含むアウトサイダー的なキャラクターは変えられない」と主張していて、内部に確執が生まれているのだという。
そうした報道自体が、共和党の全国委員会の意向を受けた意図的なものという可能性もあるが、いずれにしても現時点では明らかにトランプの勢いは鈍ってきた。では、今回勝利したクルーズはと言えば、勝ったことで「自分こそ統一候補にふさわしい」と自信満々だ。だが共和党の全国レベルとしては、保守派「だけ」に強いクルーズは「本選で勝てる候補」とはまったく思われていない。
と言うことは、共和党の全国委員会は、「トランプ降ろし」と同時に「クルーズ降ろし」もしなくてはならないわけで、今後の党内抗争がより複雑化するのは避けられないだろう。ウィスコンシン州の結果で、これまでのトランプの独走態勢は崩れ、予備選は最終局面に向けた新たな段階に入った。