最新記事

中国メディア

4.3億回、中国人に再生された日本人クリエイター

2016年4月11日(月)16時12分
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)

上海で中国語を勉強しながら「中国版ユーチューバー」に

 日本人でありながら、この投資マネーがうずまく中国「自媒体」業界で活躍している人物がいる。山下智博さんだ。北海道小樽市出身、1985年生まれの30歳。北海道で団体職員として働いていたが、2012年9月に仕事をやめて上海に移住した。2013年にラブドールの"彼女"との生活を描いた動画・ウェブドラマ「日本屌絲」を制作、中国版ニコニコ動画とも言うべき「ビリビリ動画」などに発表して一躍人気を博した。

 2014年12月からは、ウェブ番組「紳士の一分間」を制作、日々更新するようになり、累計再生回数は4億3000万回を超えたという(2016年4月時点)。日本の面白いニュース、製品、観光地、トレンドの紹介などをテーマにした5分未満の番組で、日本のユーチューバーと同じく、自らが出演し、視聴者に語りかけるスタイル。先述の「ビリビリ動画」(チャンネル登録者数は78万人とのこと)だけでなく、優酷や美拍など複数の動画サイトにアップしている。中国版ツイッター「微博」のフォロワー数は今や63万人にも上る。

ウェブ番組「紳士の一分間」

 この山下さん、3月には北海道のドラッグストアチェーン「サッポロドラッグストアー(サツドラ)」を紹介するウェブドラマを発表するなど、今や日中の企業から媒体価値を認められる存在となっている。3月下旬、取材・撮影などのため帰国した山下さんに、中国の自媒体ブームについて話を聞いた。

北海道のドラッグストアチェーン「サツドラ」を紹介するウェブドラマ

――中国版ユーチューバーとして活動し始めるきっかけは?

「(上海に渡ってから)微博をやっていたんですが、日本のことをよく質問されたんです。下ネタを含めてなんでも書き込んでいたので、面白がってもらえたんでしょうね。ただ同じ質問が何度も来るようになったので、動画に切り替えてみようと思いました。図や写真を使って説明したりするとより分かりやすいですし」

――今の自媒体ブームをどう思われますか?

「正直、出遅れたという思いはあります。僕が中国に来た時には既にネット動画はかなり盛り上がっていたので、もう1年くらい早く始めていたかったですね。ただ、動画をやれるぐらいの語学力をまずは身につける必要があったので。自媒体ですが、テレビよりもネットのほうがリアリティーがあるという点では、中国も日本も同じではないでしょうか。でも、中国には日本の深夜番組のようにディープな若者向けのテレビ番組がありません。そこをネットが担っているという点で広がりが大きいと感じます」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米下院、貧困や気候問題の支出削減法案 民主党反対 

ワールド

米FRB議長がコロナ感染、自宅から仕事継続

ビジネス

グローバル株ファンドに資金流入、米利下げ期待受け=

ワールド

米財務長官、ロシア凍結資産活用の前倒し提起へ 来週
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 2

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 3

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 4

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 7

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    「香りを嗅ぐだけで血管が若返る」毎朝のコーヒーに…

  • 10

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中