最新記事

中国メディア

4.3億回、中国人に再生された日本人クリエイター

2016年4月11日(月)16時12分
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)

――中国の言論統制や検閲などの障害を感じたことはありますか?

「実はまったくないんです。ダメなことと大丈夫なことの間には明確なラインがありますから、そこを踏み越えなければ危険はありません。僕のような人間が政治について話すことに意味はないと思いますし、中国に住んでいる以上は中国のレギュレーションに従いつつ、その中でできることを探しています」

【参考記事】中国ドラマ規制リスト:学園ドラマも刑事ドラマも禁止!

――山下さんの動画が中国人に響いている理由はなんでしょうか?

「必要なのは相手を理解する態度です。外国人が秋葉原で日本文化にドハマリしていたら、日本人として嬉しいじゃないですか。同様に僕も中国の若者の生活や文化をしっかり理解したいなという思いで活動しています。ファンは毎日、僕の動画を見てくれているわけで、中国語が少しずつ上達したりという成長も見てくれている。以前にファンレターをもらったことがあるのですが、最初は変な日本人とだけ思っていたのが次第に身近に感じるようになったと書いてあって、嬉しかったですね」

――視聴者の年齢層や具体的な見せ方に関して、日本と中国では異なるのではないでしょうか?

「僕の場合は、大学生ぐらいをメインの視聴者層と考えています。(視聴者は)自分より少し上の年齢ぐらいの人間に親しみを覚えると思うんです。見せ方の話で言いますと、中国版ユーチューバーはすごいスピードでしゃべるんですよ。爆発的人気のPAPI醤は、たぶん撮影した動画を1.2倍速ぐらいにして公開していますね。簡単なことと思うかもしれませんが、すごい発明だと思いました。中国のネット動画は30分ぐらいの長いものが中心でしたが、今では短いものが主流になっています。『万万没想到(想像もつかなかったが)』というネットドラマがヒットしたのが転換点になったと思います」

『万万没想到』とは、2013年に公開されたネットドラマ。日本アニメ『ギャグマンガ日和』の海賊版吹き替えで声優を務めたメンバーが主演している。この海賊版吹き替えは、日本版アニメに由来する超高速の台詞と、中国の東北弁をまじえた翻訳で爆発的な人気を博し、数々の流行語を生み出した。中国版ユーチューバーのスタイルの源流をたどると、日本アニメ(の海賊版)に行きつくというわけだ。

 便宜上「中国版ユーチューバー」と呼んでいるが、実際に動画を見てもらえれば――テレビ局ほどではないにしろ――日本のユーチューバーと比べて制作レベルがかなり高い水準にあることがわかるだろう。ビジネスとして活況を呈するなかで、投資も集まり、レベルが劇的に向上している。日本でもユーチューバーの媒体価値が高まるにつれ、中国同様の変化が起きていくのではないか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマーで総選挙投票開始、国軍系政党の勝利濃厚 

ワールド

米北東部に寒波、国内線9000便超欠航・遅延 クリ

ワールド

米、中国の米企業制裁「強く反対」、台湾への圧力停止

ワールド

中国外相、タイ・カンボジア外相と会談へ 停戦合意を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌や電池の検査、石油探索、セキュリティゲートなど応用範囲は広大
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    【クイズ】世界で最も1人当たりの「ワイン消費量」が…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中