「刑務所ビジネス」に群がる金と企業
2014年大会での収入は900万ドル、利益は99万7000ドルに上った。展示ブースに加え、ACAはさまざまなスポンサーも募っている。例えばGEOグループは来場者バッジに企業名を入れて6000ドルのスポンサー料を支払った。刑務所用電話の通信事業者テルメイトは、充電ブースの設置でやはり6000ドルを出資している。
民間の刑務所見本市というアイデア自体、誰しも感心するたぐいのものではない。「収益のために受刑者を収容するというシステムそのものが、良からぬ動機を引き起こす原因になる」と、アメリカ自由人権協会ニューオーリンズ支部長のマージョリー・エスマは言う。それが行き過ぎれば、軽微な犯罪で多くの人を刑務所に入れようということになりかねない。
最たる例はルイジアナ州だ。その受刑率の高さから「世界の刑務所の首都」と呼ばれる同州は、成人人口10万人のうち受刑者が1420人で、全米最大の比率だという。「受刑者を物と見なし、本質的に人間を商品化した司法システムがまかり通っている」と、ニューヨーク・タイムズ紙は指摘している。
「良からぬ動機」は、刑務所関係者の不正につながる可能性もある。ニューオーリンズでは州保安官が州法に違反して受刑者の医療システムに関する高額契約を結んだ例もあったし、ルイジアナ州で刑務所長がサイドビジネスに手を染めていたことが発覚したケースもあった。
もちろん、ACAの大会はただの展示ブースの場ではない。1階では展示会が行われているが、2階では刑務所長経験者や学者らによる数々のワークショップが開催されている。主要なテーマは司法システム改革だ。
金がかかり過ぎるからこそ儲かる
興味深いことに、パネリストの中には刑務所産業をめぐる巨額の運営費を問題点として追及する人もいる。まさにそれこそが、この大会をここまで成長させた原動力だというのに。コロラド州の超巨大刑務所の元所長ボブ・フッドによれば、全米の州刑務所に収容される20万人の受刑者に掛かる費用は約70億ドルで、司法省予算の25%を占めるのだという。
階上でのディスカッションが知性に訴えるものだとするのなら、階下の見本市では商売心に訴えるイベントが繰り広げられている。出展企業に配られたパンフレットの中で、ACAはこのイベントで「最大限の投資利益率を挙げる」コツを紹介している。彼らが言うには、「ブースでは景品やくじで来場者の関心を引く」といいらしい。
さらにこう記してもいる。「2016年のこの大会が実り多きものとなり、貴社が高い利益を挙げられますように」
[2016年2月16日号掲載]