最新記事

米予算

米国防費の膨張が止まらない!

共和党から「腰抜け」と言われるオバマ政権だが国防支出はブッシュ前政権を大きく上回っている

2016年2月26日(金)17時00分
フレッド・カプラン(スレート誌コラムニスト)

無駄遣い 国防総省はトラブル続きのF35に莫大な予算をつぎ込むことをやめようとしない Randy A. Crites-Lockheed Martin-Handout-REUTERS

 アメリカ大統領選を戦う共和党の候補者たちは、バラク・オバマ大統領が国防予算をケチり、軍をズタズタにしようとしていると非難する。しかし非難する前に、ホワイトハウスと国防総省が先頃発表した2017会計年度(16年10月~17年9月)の予算案をよく見たほうがいい。

 予算規模は、21世紀最大の年よりやや少ないだけ。しかも、その「今世紀最大の年」もオバマ政権だった。金の使い道が賢明かはともかく、これは反戦主義者の予算案でもなければ、締まり屋の予算案でもない。

 まず見落としてはならないのは、ここ数十年の国防予算がそうであるように、今回の国防予算も見掛けよりずっと多いということだ。

 国防総省によれば、17年度の国防予算はほぼ前年度並みの5827億ドル。だが、これは国防総省分だけの数字だ。行政管理予算局によれば、エネルギー省の核兵器プログラムなど、ほかの省庁の国防関連予算を含めた連邦政府全体の国防支出は6080億ドルに達する。前年比で2.1%の増加だ。

 実は、これでもまだ実態を過少評価している。国防総省の5827億ドルの予算は、「基本予算」と「国外作戦経費」の2つに分けられている。国外作戦経費はアフガニスタン、イラク、シリアなどで米軍が戦っている(あるいは、現地軍の「顧問」として関わっている)戦争の予算。基本予算は、それ以外のすべての一般経費だ。具体的には、人員、兵器、研究開発、運用・整備などに使う金である。

 近年、イラクとアフガニスタンからの米軍撤収が進むにつれて、国外作戦経費は減ってきた。それにもかかわらず、国防総省の予算全体が減っていないということは、基本予算が膨張していることを意味する。15年度と16年度を比べると、国外作戦経費は631億ドルから586億ドルに減ったのに対し、基本予算は4973億ドルから5217億ドルに増加している。5%近くの増加だ。

【参考記事】オバマの勝利なき「イラク撤退」宣言

 17年度の基本予算は5239億ドルへの微増にとどまったが、それでも01年度以降で4番目に多い額だ。これを上回った3つの年度は、10年度、11年度、12年度とすべてがオバマ政権下だった。

F35戦闘機にこだわるが

 ジョージ・W・ブッシュ前政権の8年間とオバマ政権の8年間(17年度は要求ベース)を比べると、総額はブッシュ政権が3兆3040億ドルだったのに対し、オバマ政権は4兆1212億ドルに上る(インフレ調整を行えば差は縮まるが、それによる違いは知れている)。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

国際刑事裁判所、イスラエル首相らに逮捕状 戦争犯罪

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家、9時〜23時勤務を当然と語り批判殺到
  • 4
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    クリミアでロシア黒海艦隊の司令官が「爆殺」、運転…
  • 8
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 9
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 10
    70代は「老いと闘う時期」、80代は「老いを受け入れ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中