ジカ熱報道の「数字」を疑え
ジカウイルス以外の要因も
新生児の頭蓋骨が通常よりも小さくなる要因は数多くある。バーコビッチ教授は、ジカウイルスだけではなく先天性だったり栄養不良など多くの理由が考えられると指摘する。
誤解を招きやすい病名
「小頭症」という言葉は、あまりにも単純だ。サンパウロで胎児医学を専門とするトーマス・ゴロップ医師は、小頭症は単純に「小さな頭」という意味で、いま問題になっている出生異常はもっと複雑な症状だと言う。
ゴロップは「ジカ症候群(ジカウイルスが原因とみられる新生児の一連の症状)」と言うほうが正確だろうと指摘。新生児の頭蓋が小さいというだけではなく、もっとずっと複雑な症状であり、1つの症状とジカウイルスを単純に結び付けても何の役にも立たないと語る。「残念ながら小頭症という言葉が一般化してしまった。それが多くの混乱を呼んでいる」
さまざまな情報を検証してきたが、ジカウイルスと出生異常の関連性について、専門家の間から根拠のある懸念の声が上がっているのも確かだ。ここに記した指摘は、医師たちが現場で認識している事実を否定するものではない。
ゴロップは、ブラジル北東部にいる同僚から深刻な懸念の声を聞いたと言う。彼は、多くの診療所が今も、新生児の出生異常について保健省に正確な数字を報告していない可能性を疑っている。ジカウイルスの影響で、何らかの問題を抱えて生まれてくる子の数は、私たちが把握しているよりもずっと多いかもしれない。
ただ、いまブラジルで起こっていることが何であれ、1つ確かなことがある。この問題についてはまだ正確なデータが十分にそろっておらず、世界はパニックに陥るべきではない、ということだ。
From GlobalPost.com特約
[2016年2月16日号掲載]