ジカ熱報道の「数字」を疑え
小頭症が疑われると報告されても、後にそうではなかったと判明する場合もある。保健省の発表によると、昨年10月以降に報告されている疑わしい症例、数千件のうち実際に小頭症と診断されたのは270例。一方、結局は小頭症ではなかったと判断されたのは462例にも上る。
人口と症例数の比率
ブラジルの人口は世界5位で、毎日およそ8000人の赤ちゃんが誕生している。そう考えると、報告されている小頭症の新生児の数も、そこまで異例ではないかもしれない。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校のジム・バーコビッチ教授(放射線学)は、彼が診察する新生児の2~3%に小さな頭の子が見られるが、その多くは「単に頭が小さいだけ」だと言う。頭部が小さいだけでは、新生児に先天的な発達障害があるとは限らないと指摘する。
また米疾病対策センター(CDC)は、アメリカの新生児における小頭症の発生率は0.02~0.12%だとしている。これほど低い割合でも、新生児が多いブラジルでは毎年数十人が確認される可能性がある。
過去データの信憑性
これまでブラジルでは小頭症が疑われる症例は年平均150件しか報告されていなかったのに昨年から今年は突出している、と当局やメディアは繰り返す。確かに保健省によれば、10~15年の報告例は年間139~175件だ。
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だが見逃してはいけないのは、政府が昨年後半に小児科医や診療所に対して症例の報告を徹底するよう通達を出したこと。以来、報告件数が急増した。
ネイチャー誌に掲載された報告書が指摘するように、過剰診断があった可能性は否定できない。加えて、記録管理がずさんだとよく批判される同国において、多くの診療所が以前は症例数をきちんと報告していなかった可能性もある。
ジカ熱の感染者数が不明
ブラジル保健省に国内のジカウイルス感染例がどれぐらいあるのかと問い合わせたが、「ま
ったく分からない」との回答だった。同省広報は50万~150万の間という曖昧な数字を挙げたが、それも単なる推測だと強調。「信頼できるデータがない」らしい。