マイナス金利が引き起こす金融不安、蘇るリーマンショックの悪夢
ドイツ銀行は世界的な金融取引の中核を担う。「もし何かがあれば、その影響は破綻したリーマン・ブラザーズの比ではない」(エモリキャピタルマネジメント代表取締役の江守哲氏)という警戒感が市場に広がったことも、リスクオフを加速させた要因となった。
「恐怖指数」はまだ不安の段階
ドイツ銀行の業績悪化はすでに知られた話であり、再浮上したギリシャの財政問題も今に始まったことではない。リーマンショックを経て金融規制が強化された結果、銀行など金融機関は当時と比べ無謀な投資は行いにくくなっている。
BNPパリバ証券・チーフクレジットアナリストの中空麻奈氏は「銀行などのレバレッジ投資はかなり減少している。突発的な破綻などがない限り、リーマンショックのようなことにはならない」とみる。
マイナス金利政策には、ポジティブな評価もある。
SMBC日興証券・チーフエコノミストの牧野潤一氏は、日銀のマイナス金利政策による日本経済への影響を試算。銀行は貸出金利の低下で3830億円の減益要因になる一方、保有国債の日銀への売却益が8781億円見込めるとした。国債売却によってクーポン(利息)収入が5270億円減るが、預金金利の低下もあり、銀行部門トータルでは84億円のプラスになるとしている。
「恐怖指数」とも呼ばれるシカゴ・オプション取引所(CBOE)ボラティリティー・インデックス(VIX指数)<.VIX>は8日、26ポイントまで上昇したが、昨年8月の中国ショック時(最大53ポイント)を下回り、リーマンショック時(最大89ポイント)の3分の1以下だ。「市場のリスクオフも、まだ漠然とした不安の段階に過ぎない」(外資系証券)ともいえる。
狭い政策対応余地も懸念材料
ただ、リーマンショック当時と比べ、政策対応の余地は大きく縮んでいる。家計の債務などは改善したが、どの国も政府債務が巨大化する中で財政余地は乏しい。金融緩和は量の拡大からマイナス金利の世界にまで踏み込んだ。