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黒田が見せた多彩な緩和手段、マイナス金利決定の舞台裏

2016年2月5日(金)10時47分

 黒田総裁が1月29日の会見で指摘したように、デフレに戻れば金融機関の経営は危機に直面する。そうさせないための政策選択ではあるが、長期化すれば、地域金融機関など経営体力の弱いところから、足元がおぼつかなくなるリスクが高まる。

 石原伸晃・経済再生相は2日の定例会見で、知人の地銀頭取らから、マイナス金利が経営に及ぼす副作用については聞いている、と明言した。

 また、ある金融関係者は、当座預金金利をマイナスにしても、預金金利や貸出金利がマイナス金利になる可能性は小さいと指摘。「為替・株式市場以外の実体経済への波及効果は極めて乏しい。今後、国債市場と実体経済の分断がますます激しくなる」と断言する。

 一方、10年の国債金利までマイナスになると、預金手数料など「顧客にコストを転嫁せざるをえない」(国内銀行関係者)との空気も金融界にはあるという。

政府の財政規律弛緩リスク

 先の金融関係者は、別のリスクも指摘する。国債金利の低下によって、政府の資金調達コストは確実に低下する。一方、大規模な国債買い入れを続けていく日銀の買い取り価格は上昇。「これは日銀から政府への所得移転を意味する。実質的な財政ファイナンスにさらに近づくことになる」と予想する。

 別の金融関係者も「今でさえ、ばらまきと言える政策を取っている政府が、赤字国債の増発という誘惑に負けて、財政規律が一段と崩れることが最大の懸念材料だ」と指摘する。

 さらに市場が注目するのは、3月米利上げの行方だ。もし見送りとなった場合、世界経済の唯一のエンジンである米経済への懸念が表面化し、リスクオフ心理に戻る展開も予想される。

 実際、原油価格が下落基調に戻る兆しを見せると、3日の米株市場が急落。4日の日経平均<.N225>は一時、前日比600円を超す下落となり、リスクオフに神経質な市場の最近の特徴を見せた。

 今のところ、ドル/円は119円台で推移しているものの、10日に予定されているイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長の米議会証言の内容次第では、市場がリスクオフへの傾斜を強めるリスクが存在する。

 その時にマイナス0.1%で持ちこたえることができるのかどうか。日銀の新スキームの真価が、そう遠くない時期に問われる可能性はかなりの確率でありそうだ。

*4段落目の「26日に帰国」を「24日」に訂正し、その段落の内容を再構成しました。

 (伊藤純夫 竹本能文 編集:田巻一彦)

[北京 25日 ロイター]

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