デンマーク「難民財産没収法」に抗議、アイ・ウェイウェイが作品展示を中止
人権を尊重する良き伝統に反して難民に背を向けるヨーロッパへの怒りと無念
難民と共に 多くの難民が押し寄せるギリシャのレスボス島に拠点を構え、彼らの苦境を伝える艾(右端) GIORGOS MOUTAFIS-REUTERS
世界的に知られる中国の現代美術家で社会活動家でもある艾未未(アイ・ウェイウェイ)は、デンマークの議会が26日、難民申請者の財産を没収する権限を当局に与える法案を可決したことに抗議して、デンマークで展示中の作品を撤収すると発表した。
可決された法案は、難民の流入を抑えることを目的としたもの。難民申請者の所持する貴重品や現金を押収して、難民受け入れに必要な費用に充てる措置が含まれる。艾はフォロワー20万4000人のインスタグラムと同31万人ツイッターで展示中止の決断を発表した。
艾のインスタグラムのアカウントには27日、次のようなテキストが投稿された。
「艾未未はデンマークの首都コペンハーゲンのギャラリーで開催中の個展を打ち切ることを決定した。この決断は、難民申請者から貴重品を取り上げ、家族の再会を遅らせる措置を認めたデンマーク議会の決定を受けたものだ」
「ギャラリーのオーナーも艾の決断を支持し、デンマーク議会が今日のヨーロッパと中東における最大の人道危機に対し、人権を尊重するヨーロッパ式解決の先駆けとなる代わりに、非人道的な政策への道を選んだことを遺憾に思う」
ギャラリーのキュレーターは共同通信の取材に応じ、艾がオーナーに電話で決意を伝えたと明かした。艾はデンマーク第2の都市オーフスのアロス美術館に展示されている作品も引き揚げる意向だが、美術館側にはまだ正式な連絡が来ていないという。美術館側はデンマークの難民政策に対する艾の抗議を尊重するとしながらも、「政府の政策のために、国民全員が責めを負うのはいかがなものか」と不満を漏らした。
展示中止の発表のほぼ2時間後、艾は皮肉たっぷりに「世界一幸福な国にようこそ」というコピーが躍るデンマークの代表的なビール「カールスバーグ」の広告写真をインスタグラムにアップした。
弱者に寄り添うスナップショット
艾はソーシャルメディアなどを通じて先鋭的なメッセージを発信する社会活動家として知られ、作品にも政治的なメッセージを込めてきた。昨秋にはサンフランシスコの有名な元刑務所アルカトラズでインスタレーションを公開。公民権運動に殉じたマーチン・ルーサー・キングや、アメリカ政府のインターネット監視を暴露したエドワード・スノーデンら、自らの信念によって投獄されたり、国外追放になった多数の人々の肖像をレゴブロックで制作した作品などを展示した。