香港「反中」書店関係者、謎の連続失踪──国際問題化する中国の言論弾圧
国際化することによって圧力を受けるはず──中国の言論弾圧
外国籍の者までが中国当局に捕まるとなると、筆者自身も日本国籍だからと言って、香港にも行けなくなってしまう。最近では中国大陸に気軽に出かけることも自重しているが、香港でも危ないことになる。
台湾の若者たちが大陸との間のサービス貿易協定に反対してひまわり運動を起こしたことはまだ記憶に新しいが、賢明な抗議だったと思う。さもなかったら台湾のメディアも北京政府のコントロール下に置かれて、反対する者は「当局」が逮捕するという事態になっていただろう。
もっともこの「当局」は、現地の政府でなくてはならず、香港にしても「一国二制度」を保障する基本法があるので、大陸の「当局」が動いたのだとすれば、香港の行政法においても違法となる。そうでなければならない。
ましていわんや、拘束あるいは拉致、連行された者が第三国の外国籍を持っていたとなれば、重大な違法行為である。
ただ、こうした違法行為を中国が侵せば侵すほど、逆にそれによって中国の言論弾圧が外交問題となり、国際社会で糾弾されることになるので、その意味では積極的な意味合いを帯びてくる。すなわち、中国は国際社会において窮地に立ち、一党支配体制の強引な維持が危うくなるだろうということになる。
言論の自由は人間の根幹であり、尊厳の問題だ。
それを揺るがすものは、必ずいずれは人類によって裁かれるであろう。そう信じたい。
[執筆者]
遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。