難民たちを待つ厳冬の試練
難民キャンプがあるクロアチア東部の村オパトバツでは、既に気温が3度前後にまで下がり、雨が降り続いている。基本的な設備に問題があるため、子供たちはずぶぬれになり、震えながら野外で寝ていると、現地で活動するセーブ・ザ・チルドレンの児童保護顧問シャーロッタ・ランドアルヘブシは言う。
ハンガリーの対セルビア・対クロアチア国境封鎖で、難民が流れ込んでいるスロベニアでは先月、難民キャンプの収容者がテントに火を付ける事件が起きた。長い待機を迫られ、食べ物も水も十分にない劣悪な環境に抗議するためだったという。
オミード一家は冬支度をしていないが、ギリシャに着いたら、ほかの難民と一緒に北へ向かうつもりだ。住みたい場所はどこか。そう聞くと、ワニアは満面の笑顔で「オスロ」と言った。ノルウェーの首都には、母親の親戚が暮らしている。
たった10歳のワニアが雨と寒さの中、ヨーロッパ縦断を目指すのかと思うと胸が痛くなる。途上の収容所では、援助団体が乾いた服や毛布を提供しているが、道中ずっと難民に寄り添うわけにはいかない。この事実こそ、当局や援助団体の頭を悩ます最大の問題だ。
「キャンプや都市部では冬向けのプログラムを実施できる」と、エドワーズは言う。「だが移動中の人々の寒さ対策には、有効な支援方法が存在しない」
死者は出る──冬への備えを進める援助団体は、そう承知している。分からないのは、その数がどこまで増えるかだ。
[2015年11月24日号掲載]