日中韓関係と日本の課題
北朝鮮は、毛沢東時代から、実は中国を怒らせていた。
金日成と旧ソ連のスターリンによる陰謀で、朝鮮戦争に駆り出された中国は、やむなく中国人民志願軍を北朝鮮に派兵し、多くの犠牲を払った。毛沢東の息子も、朝鮮戦争で戦死している。
にもかかわらず、1953年に朝鮮戦争が休戦すると、金日成は自分の業績を讃えて北朝鮮内における権威を高めるべく、中国人民志願軍の貢献を薄めようと(ほぼ否定しようと)したのだ。
毛沢東は激怒したが、このとき「脣亡歯寒」(唇がなければ、歯が寒い)という4文字熟語を用いて、耐えた。
「脣亡歯寒」という言葉は、「互いに助け合うべき関係にある者同士は、一体であってこそ力を発揮することができるのであって、一方がいなくなってしまうと、もう片方も危くなること」を示す言葉だ。「唇が歯を保護してくれている。剥き出しになると、歯がやられる」という、春秋時代からの教訓である。
そのための「血の同盟国」ではあっても、中国寄りで改革開放を北朝鮮で進めようとした張成沢(チャン・ソンテク)が惨殺(公開処刑)されたあとは、中朝関係はいっそう険悪だ。
しかし、この「唇」(北朝鮮)を捨ててしまうと、「歯」(中国)が寒い(危ない)。
そこで中国は「歯」を守る「唇」として、北朝鮮を一応そのままにしておき、積極的に「韓国」を「活用」する道を選んだのである。
歴史問題に関しては、すでに11月2日付の本コラム <日中韓首脳会談――中国こそ「歴史直視」を>で十分に述べたので、ここでは省略する。
韓国にとっての日中韓と日韓――北の脅威と米中の狭間で
このような中国による「抱き込み戦略」は、アメリカにとって面白いはずもないだろう。アメリカと韓国の間には、れっきとした「米韓相互防衛条約」という軍事同盟がある。この米韓軍事同盟により、韓国は北の脅威から守られていたはずだ。それは朝鮮戦争(1950年~53年)において、アメリカが韓国側に付いて北の南下を食い止めてくれたので、53年7月に休戦となった直後に、「どうか、今後も韓国を北の脅威から守って下さい」という趣旨で、同年10月に調印されたものである。