最新記事

東アジア

日中韓関係と日本の課題

2015年11月6日(金)17時30分
遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)

ぎこちない関係 やっと実現した安倍晋三首相と朴槿恵大統領の日韓首脳会談だが Kim Hong-Ji-REUTERS

 日中韓首脳会談、日中首脳会談、日韓首脳会談、そして中台トップ会談と、ここのところ日本周辺をめぐる動きが目まぐるしい。このような中で、日本は何をすべきで、どういう位置づけにあるか、考察してみたい。

中国にとっての日中韓――「脣亡歯寒」(唇なくば、歯寒し)

 3年半ぶりに日中韓首脳会談が開催されたこと自体は有意義であったと思う。開かれないよりは開かれた方がいい。

 この会談は「首脳会談」という名称はあるものの、習近平国家主席が出席する性格のものでなく、リーマンショックのあった2008年から温家宝首相が中国を代表する形で「日中韓サミット」の形で始まったもので、李克強首相(国務院総理)が出席するのは慣例上正常である。習近平国家主席が出席しなかったことが「格を落している」というわけではない。

 その意味、日中首脳会談は、安倍晋三首相と習近平国家主席が二度も単独で会っているので、そうきわだって「さあ、3年ぶりだ!」と大騒ぎすることではない。

 問題は韓国だ。

 韓国の朴槿惠(パク・クネ)大統領が慰安婦問題に関する国民世論に抑えられて、安倍総理との会談を開催する勇気を持ちえなかった。

 その一方で、何としても韓国を自分の側に抱き込みたい中国は、韓国に猛接近。米韓と日韓の関係を、できるだけ疎遠にして、中国側の防衛壁として韓国を位置づけたいと、中国は思うようになっていた。

 北朝鮮を訪問せずに、そして北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)が訪中することもなく、習近平国家主席は朴大統領の訪中を何度も受け入れ、かつ習近平自身が韓国を訪問したことは、まだ記憶に新しい。

 北朝鮮と中国の関係は、中韓国交正常化をした1992年から「寒い」関係にはなっていた。北朝鮮にとって最大の敵国である韓国と中国が仲良くするわけだから、北朝鮮にしてみれば「最大の裏切り」だ。だから、当時の金日成(キム・イルソン)は「中国がそういうことをするのなら、我々は中華民国と国交を結んでやる!」と激怒した。

 当時まだ生存していた鄧小平は「やるならやってみろ!」と激しく言い返した。

 北朝鮮は、軍事力から言って、勝てるはずがない。中国が対立していた旧ソ連は、この時すでに崩壊していたし、中国はアメリカともずいぶん前から国交を正常化している。北朝鮮は軍事的に勝ち目はないだろう。結局、中国による北朝鮮へのさらなる経済支援を引き出して、「冷え切った夫婦」のような関係を続けている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アダニ問題が印政界に波及、野党が審議求め議会空転

ビジネス

村田製が新中計、27年度売上収益2兆円 AI拡大で

ワールド

ロシア、ウクライナ・ミコライウ州のエネインフラ攻撃

ワールド

リトアニアで貨物機墜落、搭乗員1人が死亡 空港付近
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 10
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中