残虐非道のエジプト大統領がイギリスで大歓迎
当然ながら、メディアの批判が収まるとすぐに、武器輸出は再開され、「体裁を繕うための禁輸」と、活動家に皮肉られる始末だった。英政府が取った措置はその典型だ。イギリスは13年8月、エジプト向けの武器輸出49件を差し止めたが、わずか2カ月後には24件が許可された。許可が完全に取り消されたのは7件にすぎず、お得意様のエジプト軍をほとんど待たせることなく通常通りの武器売却が再開された。
人権問題を批判するのは口先だけで、武器を売りたい本音はみえみえだ。クーデター以後、英政府が認可したエジプト向けの軍事物資の輸出は総額1億3070万ドルに上る。許可リストにはシナイ半島で武装組織対策に使用される戦闘車両の部品6150万ドル、目標指示装置3840万ドルなどが含まれる。
武器展示会には英政府がご招待
英内務省の共催で今年3月に開催された「安全保障・警備展」には、英政府の招きでエジプト軍の代表が来場。英NGO「武器貿易反対キャンペーン(CAAT)」による情報開示請求で、エジプト代表が会場で武器輸出の促進を図る行政機関・英国貿易投資総省国防安全保障機構(UKTIDSO)の代表と会談したことが明らかになった。エジプト代表は今年9月にロンドンで開催された防衛セキュリティー機器国際展(DSEI)にも参加。このときはシシ大統領の首席補佐官も一時的な外交特権を与えられて会場を訪れた。
政治家と軍事産業は何事もなかったかのようにエジプトの軍部と付き合っているが、シシの強権支配は相変わらずで、市民が抑圧される状況は改善されていない。
キャメロンは、シシと写真を撮りながら、シシ政権に殺された人々の家族のことや牢獄で衰弱していくジャーナリストのことを一瞬でも考えるだろうか。つい2年前、エジプトに人権尊重と民主化を要求した自分のことを思い起こすだろうか。
シシが欧米諸国の政治的軍事的な支持を得ている限り、エジプトの人々にとっての状況は何も変わらない。2011年に蜂起した民衆は将来への希望と民主化への欲求に満ちあふれていた。だがそれは、残酷で独裁的な政権に踏みにじられ、欧米諸国はそんな政権を黙認し支え続けている。
*筆者は、イギリスの市民団体「武器貿易反対キャンペーン(CAAT)」のスポークスマン