ドイツが「国境開放」「難民歓迎」を1週間でやめた理由
多くの難民の希望だったオーストリアからの国際列車も運行停止に
「希望の国」へ ドイツにつながる線路の上をひたすら歩く難民の家族 Laszlo Balogh-REUTERS
ドイツが緊急措置として国境を開放し難民を盛大に歓迎してからわずか1週間。再び国境を閉ざすと発表した。難民にとっては衝撃的な政策転換だ。次から次へと押し寄せる難民の数は予想をはるかに超えており、とても対処しきれなくなったという。
今後は、この一週間の間に難民が殺到しているオーストリアとの国境近くに検問所を置く。また難民の大半がドイツへの入国手段として使ってきたオーストリアからの国際列車も運行を停止。ドイツのミュンヘンには先週土曜だけで13,000人の難民が到着し、今年の難民受け入れ数は80万人にも上るとみられている。
トマス・デメジエール独内相がロイター通信に語ったところによれば、こうした国境管理の目的は「ドイツへの難民の流入ペースを抑え、入国した人々を秩序立った手続きで迎えるため」だという。また「難民は保護を受ける国を選ぶことはできない」ことを理解すべきだとも語った。今後オーストリアとドイツの国境を越えられるのは、EU(欧州連合)市民と、有効な書類を持つ者だけになる。
この決定により、ドイツはEU加盟国相互の通行自由化を定めたシェンゲン協定から一時的に離脱することになる。この発表は、EUが難民問題について話し合うな内相理事会の前日に行われた。デメジエールは、新しい国境管理は「ヨーロッパへの警告」だと言う。ドイツは人道的責任を果たしているが、多くの難民受け入れとそれに伴う負担は、ヨーロッパ全体の連帯の下に負わなければならない、というのだ。
域内通行自由が生んだ難民の道
英BBCニュースのダミアン・マクギネスは、デメジエールの発表は「抜け目のない」政治判断に基づいているという。(難民をドイツに受け入れないことで)、自ら責任を果たすようヨーロッパ諸国に圧力をかけられるからだ。だが、トラブルは避けられない。オーストリアとドイツの国境は大変な混乱に陥るだろう、と英ガーディアン紙は報じた。数万人もの難民はどんな手段を使ってでもドイツに入ろうとするだろうし、国境の手前は難民キャンプと化すだろう──。