中国鉄道、南米上陸の皮算用
経済減速で両国に焦り
昨年12 月には、中国系香港企業の資金拠出により、中米のニカラグアで大西洋と太平洋を結ぶ運河の建設が着工した。20年の開業を目指しており、アメリカの影響が強いパナマ運河を上回る規模の巨大運河になる見込みだ。しかしこのプロジェクトも、土地の権利と環境破壊の懸念をめぐり激しい反発を招いている。
もちろん、ニカラグア運河と南米横断鉄道を同列に論じるべきではない。南米横断鉄道計画は、国外でのインフラ事業に豊富な経験を持つ中国政府が正式に支持しており、既存インフラとの競合関係もない。それでも、中国とブラジル、ペルーの政府が環境と人権への配慮を怠れば、ニカラグア運河やベロモンテ水力発電ダムのように猛反発を買いかねない。計画が具体化するにつれて反発はさらに強まるだろうと、ネイバは予測する。
ただし、人権団体や環境保護団体の声が反映される可能性はあると、ネイバは言う。「中国はこれまで多くの国で同じようなプロジェクトを行い、地域コミュニティーや環境への配慮を怠って反発を招いてきた。今回の鉄道計画では、市民団体が求めれば、あらゆる段階で計画に関与することができるかもしれない」
ブラジルとペルーの両政府の出方も注目する必要がある。経済が減速し、中国からの需要も縮小している状況で、「両国にはやや焦りが見られる」と、ギャラガーは言う。「焦るとずさんな行動を取りがちだ」
鉄道は長期にわたるインフラ事業だ。すべての当事者が長い目でものを見て判断を下すべきだろう。
[2015年6月16日号掲載]