中国鉄道、南米上陸の皮算用
いま南米では、インフラへの投資が絶望的に不足している。国連中南米カリブ経済委員会(ECLAC)の推計によれば、この地域のインフラ需要を満たすためには、2020年まで年間約3200億ドルの投資が必要だ。これは域内のGDPの6.2%に相当するが、現状ではインフラ投資に回されている金額はGDPの2.7%にとどまっている。
中国は近年、融資や投資を通じて南米諸国との関係を深めてきた。1月には、習が10年間で2500億ドルを投資することを約束している。IMF(国際通貨基金)の予測によれば今年の経済成長率が1%未満にとどまる南米諸国も、中国マネーを歓迎している。
南米横断鉄道は「中国と南米諸国の関係の試金石だ」と、ギャラガーは言う。「環境への悪影響を最小限に抑え、地域コミュニティーの意向を計画に反映させることができれば、高速鉄道はすべての当事者に恩恵をもたらすが、その正反対の結果になる可能性もある」
環境保護団体や市民団体は、早くも警告を発している。計画されているルートは、アマゾンの熱帯雨林を突っ切り、先住民の居住地域を通るからだ。「過去にブラジルで実施された大規模インフラ事業の例を考えれば、今回の計画がブラジルに好ましいものとは到底言えない」と、
ビジネス・人権資料センター(ブラジル)の研究員ジュリア・メロ・ネイバは言う。
ブラジルで激しい反発を招いた大規模インフラ事業としては、北部パラ州のベロモンテ水力発電ダム計画がよく知られている。ダム建設に伴う立ち退きについて事前の相談がなく、補償も不十分だとして、先住民が強く抵抗した。その結果、計画に大幅な遅れが生じ、莫大な予算が無駄になった。政府に対する地域コミュニティーの信頼も損なわれた。