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仏新聞社襲撃テロで高まる「極右大統領」の現実味

2015年1月16日(金)12時12分
ウィリアム・ドブソン(本誌コラムニスト)

 主流派の有権者の支持を得るためには、父ルペンが目立っては困る。娘は父親が注目を集めないように努める一方で、若い幹部を「党の顔」として前面に押し出し始めた。33歳のフロリアン・フィリポ副党首はその1人だ。国民戦線がさらに勢力を拡大するためには、左派の支持者を引き付ける必要があると、フィリポは語っている。

 今回のテロで、それが一層容易になる。イスラムの脅威に早くから警告を発していたルペンに先見の明があったと考える国民も多いだろう。

 ほかの政治指導者が追悼を呼び掛けたり、テロの背後にある憎悪を非難したりしているとき、ルペンはテロをフランスに対する宣戦布告と呼んだ。テロ翌日には、死刑制度の復活を問う国民投票を実施すべきだとも述べている。

 もちろん、万年野党だからこそ欠点が見えていないという面はある。これまで国内の選挙ではほとんど議席を獲得できておらず、行政を担った経験も乏しい。しかし、3月の地方選挙では、大躍進があっても不思議でない。

 そして17年には、「ルペン」という名の大統領が誕生するという、かつてはとうてい想像できなかったことが現実になるのだろうか。

[2015年1月20日号掲載]

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