ソ連末期に似てきた? 習近平政権に迫る「限界」
10年後の今、「パンダ」に話を聞かれたり、彼らと「お茶する」のは極めて当たり前の光景になった。ネットや新聞で政府と異なる見解の記事を発表している人物が「パンダ」とお茶しないのは、逆にとても不自然だ。人々はもう強圧的な政府を恐れていない。実はこれは共産党が一番恐れている事態だ。民衆が政府を恐れなくなれば、今度は政府が民衆を恐れる番だ。
この状態は70〜80年代のソ連と極めて似ている。ブレジネフ書記長時代のソ連は、短期間で終わった経済改革の後、再び統制強化に向かった時代だった。メディアと世論を締め付け、特権階級を拡大する。その代わり、ブレジネフが最初は反対していた個人崇拝が復活した。江沢民(チアン・ツォーミン)、胡錦濤(フー・チンタオ)時代には後退した個人崇拝が復権し、指導者のイメージづくりが既に始まっている現在の中国と酷似している。
ソ連を崩壊に導いたのは、ブレジネフ時代末期に現れた反体制運動だけでなく、「夜の顔」現象も原因だ。執務時間と家庭ではまったく違う内容の話をする「夜の顔」現象は個人の人格分裂と社会主義思想への面従腹背を生み、最後は統治基盤を揺さぶった。
だからこそ、中国共産党はメディアを使って反体制派を威嚇している。ただそのやり方に効果はあるかどうかは疑問だ。ソ連共産党はノーベル文学賞を受賞した『収容所群島』の作家ソルジェニーツィンを国外追放した。中国共産党の反体制派に対するやり方とまったく同じだ。たどる道も恐らく同じだろう。
改革派、保守派ともに「憲政」議論は続いている。反体制派が集まって食事しただけで事情聴取する「集合食事罪」の摘発に「パンダ」たちは忙しい。習はロシアのプーチン大統領に「あなたと僕は似ている」と言ったらしい。これでは「習大大(習おじさん)」でなく「習大帝」だ。慎重居士の李首相はまだまともに発言すらしていない。
来年の秋には、任期中の方針を決める重要会議「3中全会」が迫っている。国民よりずっと忙しい習と李に、残された時間は実は多くはない。
筆者の喩塵(ユィ・チェン)は元南方都市報記者。90年代に河南省で起きた血液エイズ感染問題を調査報道した。