最新記事

中国政治

ソ連末期に似てきた? 習近平政権に迫る「限界」

2013年6月28日(金)15時46分
喩塵(ジャーナリスト)

 10年後の今、「パンダ」に話を聞かれたり、彼らと「お茶する」のは極めて当たり前の光景になった。ネットや新聞で政府と異なる見解の記事を発表している人物が「パンダ」とお茶しないのは、逆にとても不自然だ。人々はもう強圧的な政府を恐れていない。実はこれは共産党が一番恐れている事態だ。民衆が政府を恐れなくなれば、今度は政府が民衆を恐れる番だ。

 この状態は70〜80年代のソ連と極めて似ている。ブレジネフ書記長時代のソ連は、短期間で終わった経済改革の後、再び統制強化に向かった時代だった。メディアと世論を締め付け、特権階級を拡大する。その代わり、ブレジネフが最初は反対していた個人崇拝が復活した。江沢民(チアン・ツォーミン)、胡錦濤(フー・チンタオ)時代には後退した個人崇拝が復権し、指導者のイメージづくりが既に始まっている現在の中国と酷似している。

 ソ連を崩壊に導いたのは、ブレジネフ時代末期に現れた反体制運動だけでなく、「夜の顔」現象も原因だ。執務時間と家庭ではまったく違う内容の話をする「夜の顔」現象は個人の人格分裂と社会主義思想への面従腹背を生み、最後は統治基盤を揺さぶった。

 だからこそ、中国共産党はメディアを使って反体制派を威嚇している。ただそのやり方に効果はあるかどうかは疑問だ。ソ連共産党はノーベル文学賞を受賞した『収容所群島』の作家ソルジェニーツィンを国外追放した。中国共産党の反体制派に対するやり方とまったく同じだ。たどる道も恐らく同じだろう。

 改革派、保守派ともに「憲政」議論は続いている。反体制派が集まって食事しただけで事情聴取する「集合食事罪」の摘発に「パンダ」たちは忙しい。習はロシアのプーチン大統領に「あなたと僕は似ている」と言ったらしい。これでは「習大大(習おじさん)」でなく「習大帝」だ。慎重居士の李首相はまだまともに発言すらしていない。

 来年の秋には、任期中の方針を決める重要会議「3中全会」が迫っている。国民よりずっと忙しい習と李に、残された時間は実は多くはない。


 筆者の喩塵(ユィ・チェン)は元南方都市報記者。90年代に河南省で起きた血液エイズ感染問題を調査報道した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 6
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 9
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中