バーレーン危機にサウジが怯える理由
ペルシャ湾の島国に飛び火した反体制デモは、アラブの大国サウジアラビアを揺るがしかねない
止まらない連鎖 バーレーンの首都マナマの真珠広場には連日、デモ隊が集結している(2月15日) Hamad I Mohammed-Reuters
2月18日午後、バーレーンの首都マナマの中心部に位置する真珠広場をめざして、数千人が街を練り歩いていた。前日のデモに参加して命を落とした市民の葬儀を終えて、広場に集まってきたのだ。待ち受けていた治安部隊は、非武装の群衆に向けて発砲。この衝突で50人が負傷し、少なくとも4人が死亡したと伝えられる。
14日に始まったバーレーンの反政府デモは日を追うごとに激しさを増している。政府は19日に軍を真珠広場から撤退させてデモ隊に対話を呼び掛けたが、応じる気配はない。アメリカがバーレーン当局にたびたび自制を求めている中で起きた武力行使は、近隣諸国にも多大な影響を与えかねない。
中東を席巻する民主化運動の連鎖がペルシャ湾の島国バーレーンにまで及んだ事態に、とりわけ懸念を募らせているのがサウジアラビアだ。バーレーンとサウジアラビアは共に王政国家で、親しい同盟国でもある。1カ月足らずの間にチュニジアとエジプトで国家元首がその座を追われるという非常事態の中、サウジアラビアにとって隣国バーレーンの王政崩壊は絶対に避けたい展開だ。
中東騒乱の元凶はイランとアメリカ?
公式声明は出していないものの、バーレーンの騒乱に関するサウジ当局の姿勢は明らかだ。サウジを含む湾岸協力会議(GCC)の6つの加盟国の外相は16日にマナマで緊急会談を開き、バーレーン王室を支持する声明を出した。
さらに、バーレーンの国内問題に対する外国の干渉を拒否する意思も示された。これはアメリカとイランを意識したものだろう。ヒラリー・クリントン米国務長官によると、17日に行われたバーレーン外相との電話会談で、クリントンは「明日の葬儀と礼拝が、武力行使によって損なわれないことが重要だと強調した」という。
サウジアラビアの視点に立てば、中東に広がる反政府デモを生み出した元凶はイランとアメリカ、ということになる。イランはアラブ諸国の問題に首を突っ込んでは、厄介を引き起こすトラブルメーカーだ。そのため、アラブ世界全域でイスラム教スンニ派とシーア派の対立意識が高まっている。
エジプトの「革命」に対するアメリカの対応も、サウジアラビアにとっては衝撃的だった。アメリカはデモ隊を支持する立場で介入し、30年来の盟友ホスニ・ムバラク大統領を見捨てた。
こうした状況を考えれば、サウジアラビアがバーレーンを自国の安全保障の要と考えるのはもっともだ。王族が政治を司る絶対君主制のサウジアラビアに対して、バーレーンは二院制議会をもつ立憲君主国だが、両国ともスンニ派の王族が支配している点は共通している。