中東和平ネタニヤフの見えない真意
ネタニヤフに言わせれば、目標達成の最大の障害はパレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長だ。09年11月、イスラエルがヨルダン川西岸での入植地建設を10カ月間凍結すると発表し、ネタニヤフが直接交渉の再開を懇願したにもかかわらず、アッバスはなかなか応じようとしなかった。
その言い分にも一理ある。過去10年間、2度にわたってイスラエルとの抜本的な合意に失敗した事実を考えれば、パレスチナ自治政府に合意にこぎ着ける能力があるかという点には疑問符が付く。
ハーレツ紙の大物記者でコラムニストのアルフ・ベンは09年後半にネタニヤフと会談した。その模様を伝える記事には、読者の多くを驚愕させる一文があった。「私はネタニヤフを信じる」
しかし、そうではない人も大勢いる。懐疑的な見方は誤りだと証明したいなら、ネタニヤフは入植地建設の凍結期間が終了する9月下旬、期間延長の決断というチャンスを手にできる。とはいえ連立政権のメンバーは建設計画の再開を求めるに違いない。
長年、断続的にネタニヤフに仕えてきたある顧問によれば、ネタニヤフが右派の連立相手を捨てて中道寄りの連立政権を組むこともあり得ないだろう。「ビビは常に(アメリカ人政治顧問の)アーサー・フィンケルスタインの言葉を引用する。『基盤を守れ。それが一番大事だ』と」
その意味では、ネタニヤフとアッバスは似た者同士だ。アッバスも、身内からの圧力とライバル勢力ハマスとの対立という難問に直面している。だが少なくとも1つの点でアッバスは有利だ。アッバスに求められているのはイスラエルと合意を結ぶ能力を示すことだけ。だがネタニヤフは、自分が本気で合意を求めていることも証明しなければならない。
[2010年9月 8日号掲載]