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オバマの親族の貧困話にG8が動いた?

父の故郷アフリカの窮状を知るオバマの強力な後押しで、途上国に対する農業・食糧支援が増額に

2009年7月15日(水)16時13分
ホリー・ベイリー(ホワイトハウス担当)

7月8~10日にイタリアで開催された主要8カ国首脳会議(ラクイラ・サミット)の成果の1つは、途上国に対する農業・食糧支援として今後3年間に計200億ドルを拠出すると合意したことだ。

 各国政府の当局者は当初、拠出額は150億ドルにとどまるとみていた。最終的に50億ドル上乗せされたのは、オバマ米大統領の強力な後押しがあったおかげだ。

 最終日に開かれた食糧問題に関する会合には、ナイジェリアやリビア、エチオピアなどアフリカ大陸諸国の首脳も参加。オバマはその席で、自らの親族の体験談をもとにアフリカ問題や貧困について語った。

「オバマの実父がケニア出身であること、彼の親戚が今も貧しい生活を送っていることは周知の事実だ」と、ある国の政府高官は記者団に述べた。「オバマは貧困を実体験として知っている」

「いとこは賄賂を払わされている」

 オバマは父親の故国の衰退についても語った。父親が生きていた頃、ケニアは韓国より高い経済力を誇ったが、親族たちは今や苦境にあえいでいる。前出の政府高官によれば「ケニアにいるオバマのいとこは、賄賂を払わなければ職に就けない」状況だ。

 オバマの言葉は出席者の心を捉えたようだ。「会場は静まり返っていた」と、オバマの側近は言う。

 オバマは会合終了後の記者会見で、各国首脳に語った話をあらためて披露した。

「父は50年前に(留学生として)アメリカを訪れた。(ケニアの)小さな村には今も私の親戚が住んでいる。彼らは飢えていないが、彼らの村は飢えとは無縁ではない。

 私は貧困の実態を具体的に把握している。ケニアなどアフリカの人々に話を聞けば、彼らはこう答えるはずだ。貧困の原因の1つは政治制度が一般市民のために機能していないことにある、と。政治システムの改善が急務だ」

[2009年7月22日号掲載]

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