妊娠して気づいたのは、「マタニティマーク」が全員に無視されることだった...
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<急速な少子化に焦った政府はさまざまな対策を打ち出そうとしている。しかし、むしろ不安なことは、子どもを持ちたいという女性が「透明」になっている社会...>
少子化対策が叫ばれてはいるが、国が提示する政策や社会の未来に現実的な希望を持ちづらい。それでも子を持ちたいと願う者たちに優しい未来はあるのか...。
35歳、都会に生まれ育ち、仕事も軌道に乗っていた作家の小野美由紀さんは、妊娠出産を通じて、今までの自分には見えていなかった問題に気づきはじめる。新刊『わっしょい!妊婦』(CCCメディアハウス)より一部抜粋。
総スルーされるマタニティマーク
たまげたことに、マタニティマークを付けて満員電車に乗っても、これが、まじでまったく総スルーなのである。
これまで電車の中やバスの中でマタニティマークを付けた人を見るたびに、私はせっせと席を譲ってきたのだが、いざ自分が付ける側になってみると、まるで私もマタニティマークも透明になってしまったように、誰にも席を譲られない。
妊婦は激怒した。
いや、確かに、妊娠初期はまだ腹も出ておらず見た目では分からないので仕方がなくもあるのだが、マークをつけて優先席の前に立っても誰にも譲られないなんて、さすがに社会、冷たくないか。
そう、ぷりぷりしながら夫に話すと、彼は大真面目な顔で「マタニティマークって何?」と言い出したので私はもんどり打った。
「妊婦さんが付けてるの、見たことない?」
「そんなの小さすぎて、目に付かないし、そもそも電車の中で人のことなんてジロジロ見ないもん」
マタニティマークは認知されているのか問題
確かにこのマタニティマーク、同じ妊娠している女性じゃなきゃ気づかないくらいの慎ましさというか、マークの意味ないやろ! と叫びたくなる絵柄なのである。