最新記事

アメリカ

白人っぽ過ぎ?「カレン」が人気急落

Bye Bye, Karen

2020年10月27日(火)17時50分
パメラ・レッドモンド

Olga Ignatova-iStock

<あまりにありふれていて白人の特権意識を連想させるため赤ちゃんの名付け候補リストから外される運命に>

アメリカには今、「カレン」という名を持つ人が110万7736人いる(筆者の運営するウェブサイト「ネームべリー」調べ)。でも、110万7737人目が生まれることはなさそうだ。

カレンは「キャサリン」やロシア語の「エカテリーナ」に通じ、元は「純粋さ」を意味する素敵な女性名。なのに今は、みんなから毛嫌いされている。一部のメディアやSNSで、「差別意識・特権意識丸出しの困った白人中年女性」の代名詞として使われ始めたからだ。

こうなると、良識ある親は娘をカレンと名付けない。息子をアドルフと呼ばないのと同じだ。ただしアドルフ(20世紀の世界に戦争と破壊をもたらした独裁者の名)と違って、カレンという名の極悪人がいたわけではない。

映画や小説で、傲慢で恥知らずな人物の名として使われたこともない。ちなみに「グイド」という男子名は1983年の映画『卒業白書』で使われて以来、マッチョで鼻持ちならない男の代名詞となり、すっかり廃れてしまった。

nww-1027-name-001.jpg

ILLUSTRATION BY NEWSWEEK

2018年にアメリカで生まれた赤ちゃんで、グイドと名付けられた子は一人もいない(アドルフも皆無)。ただし『卒業白書』公開の前年には17人のグイドがいた。スーザン(女)もディック(男)も17人だった。

ディックの全盛期は1934年で、1131人の男児がこの名をもらった。当時もこの語は男性器を指す俗語として用いられていたが、その名を息子に与えることをためらう親は、まだいなかった。

しかし1960年代後半になると、ディックには「間抜け」や「嫌な奴」というニュアンスが加わった。以後、わが子をディックと名付ける親はどんどん減っていった。

中には、不遇の時期を耐えて生き残り、復活する名前もある。いい例が「ブリジット」。今ではみんな忘れているだろうが、かつてのアメリカでは貧しいアイルランド移民に対する差別意識が強く、彼らの子で「メイド」として働くしかない娘たちの代名詞がブリジットだった。

そんな名前を背負って生きるのはつらい。だから多くのブリジットが、自分の名を捨てた。筆者の祖母もそうだ。祖母ブリジットは1911年に「バーサ」と改名。しかし第1次大戦が始まると、敵(ドイツ軍)の使う巨大な砲弾が「ディッケ・べルタ(太っちょバーサ)」と呼ばれるようになった。祖母は再び改名し、今度は「べアトリス」を名乗った。

今いる大勢のカレンも、かつての祖母と同じ選択をするかもしれない。今年21歳になるカレン(2000人以上いる)の多くが改名の権利を行使して、ケリーやオリビアになるかもしれない。一昨年に生まれた娘をカレンと名付けた500人弱の親たちも、今頃はきっと激しい後悔の念に駆られている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ゴールドマン、24年の北海ブレント価格は平均80ド

ビジネス

日経平均は3日ぶり反発、エヌビディア決算無難通過で

ワールド

米天然ガス生産、24年は微減へ 25年は増加見通し

ワールド

ロシアが北朝鮮に対空ミサイル提供、韓国政府高官が指
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 2

    【ヨルダン王室】世界がうっとり、ラジワ皇太子妃の…

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 5

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 1

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 2

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 3

    キャサリン妃が「涙ぐむ姿」が話題に...今年初めて「…

  • 4

    アジア系男性は「恋愛の序列の最下層」──リアルもオ…

  • 5

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 1

    「家族は見た目も、心も冷たい」と語る、ヘンリー王…

  • 2

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が出産後初めて公の場へ...…

  • 4

    カミラ王妃はなぜ、いきなり泣き出したのか?...「笑…

  • 5

    キャサリン妃が「大胆な質問」に爆笑する姿が話題に.…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:超解説 トランプ2.0

特集:超解説 トランプ2.0

2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること