経済危機で失業 ピンチをチャンスに変えた夫婦の逆転劇
経済危機のさなか、アテネで起業したLiana Agrafiotiさんと夫のTakis Filoxenidisさん Courtesy of Entopia
<キャリアを優先し、やっと出産という時に起こったギリシャ経済危機。産休が明けたら勤め先はなくなっていたし、夫も失職...それでも夫婦はギリシャで起業する道を選んだ>
2010年に経済危機に陥ったギリシャは、EUやIMF(国際通貨基金)から莫大な融資を得て混乱を回避し、昨夏、ユーロ圏財務相会合は「ギリシャ財政危機の終息」を宣言、金融支援は終了した。筆者が昨年アテネを訪れたときは、そんな中での観光分野の好調が実感でき(観光客が多かった)、週末に地元の人たちが集まる場所に行けば、老若男女が楽しそうに過ごしていた。
とはいえ、経済危機で多くの人たちが職を失った。失業率は、2009年の9.6%が急上昇して2013年には27.48%とピークに達した。2019年10月時点の推計では17.8%となっている。(ギリシャの失業率の推移、日本との比較はこちら)
仕事を求めて、他国へ移住した人たちも多かった。また、残って起業した人たちも多かった。二児の母、リアナ・アグラフィオティさんも、残って新しい道を目指した1人だ。ギリシャ産のオリーブオイルやハチミツやパテなどを「エントピア(Entopia)」というブランド名で販売して、前進している。
妻も夫も、仕事を失った
リアナさんは、広告業界で働いていた。ギリシャでは働いて子供を持つとしたら、できるだけ早く出産してからキャリアを積み上げるか、キャリアを十分に積んで遅めに出産し、仕事を続けるかだというが、リアナさんはまずキャリアを積み、出産するほうを選んだ。経済危機がおそったのは、1人目の子供を妊娠していたときだった。
リアナさんは「退職して母親専業になるか、それとも働き続けるか」と会社に二者択一を迫られ仰天したという。働き続けると決めていたリアナさんは、体調が悪い日が多かったが、何事もないように働くことを要求された。そして、産後、復帰しようとしたら会社はもうなかった。
状況はひどくなるばかりで、あの会社までがという企業も倒産し、建設関係で働いていた夫のタキス・フィロクセニディスさんも職を失った。
2人で今後のことを話し合い、国外で仕事を見つけて住むことも考えたが、子供をどういった環境で育てたいかを重視して「ギリシャがいい」と2人の意見が一致した。そして、国外に旅行したある日、ある人がギリシャ産の食品を2人に見せたという。
ギリシャ語で書かれたラベルを見て、「ギリシャ語で書いてあったら、国外の人はわからない。そういえば、ギリシャの食品は国外へはそれほど出ていない。イタリアやスペインなどほかの南欧のように、ギリシャの食品ももっと国外にアピールしない手はない」と気がついた。そして、ギリシャ内の農家と工場を探して、エントピアを設立した。