ホンジュラスのコーヒーは歓迎されても人間は追い返される──知られざるコーヒー危機
Root Cause
苦しくても働き続ける
アルーコはアメリカのコー ヒー豆販売業者のサンフラン シスコ(SF)ベイコーヒー と密接な関係にあるため、地元のコーヒー農家に高い買い付け料金を支払うことができたと、アルーコの「テイスト・テスター」のアナ・セシリア・エステベスは言う。「直近の4年間は固定価格で買い上げてくれたので、以前に比べて(経営が)安定してきた」
15年に1ポンド当たり30レンビラ(約130円)だったコーヒーの国際価格は、現在では10〜15レンビラにまで下がっている。だが、アルーコからSFベイコーヒーへの卸価格は20レンビラ以上だと、エステベスは言う。
SFベイコーヒーも、ホンジュラスで2万2000以上の農家と取引があり、直近の収穫期には1ポンド当たり26〜30レンビラの高値で買い付けたと認めている。コーヒー農家が直面する格差や経済的苦境に対処するための措置だ。
同社は17年、さび病の大発生で打撃を受けたホンジュラスの農家向けに、さび病に強い品種を含む100万本のコーヒーの苗を贈った。その後もコルキンでの学校建設の資金や奨学金を提供している。
コルキンのコーヒー農家にとってはありがたい支援だが、全員がこうしたプログラムに参加できるわけではない。厳格な要件下でアルーコ向けのコーヒーを栽培する「パートナー」は283軒。地元の農園主のごく一部だ。
コーヒー豆をコルキンで調達している業者はSFベイコーヒーだけではない。ネスレのような業界の巨人も、この地域のアラビカ種を購入している。だがペレスのようなコーヒー農家は、家族を十分に養えるだけの収入を得られないのが実情だ。
「ここでは誰もがコーヒーに頼って生きている」とアルーコのエステベスは言う。「常に豊作というわけにはいかないけれど、この業界はそういうもの。苦しくても頑張って働き続けるしかない」
ペレスは自分や子供、まだ見ぬ孫の将来を達観しているようだ。「息子には、私もここから出ていきたいと感じたことが何度もあると伝えた。もう限界だ、ここを去るしかないと。でも、子供たちとこの家を捨てて出ていくわけにはいかない」
ペレスはそう言ってから、ため息をついた。「時々こう思うんだ。神様にお祈りしたら、後は全てあの方の思し召し次第だと」
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[2019年11月19日号掲載]
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