私たちが大好きなジーンズは、東南アジアの劣悪な環境で作られている
The Real Cost of Your Blue Jeans
べトナムではほんの15年前まで農業が経済の大部分を占めていたが、2018年には繊維・衣料品メーカー約6000社が250万人を雇用、輸出の約16%を占め、輸出額は300億ドルを超えた。2020年には500億ドルを超えるはずだと専門家はみている。
仕事の大半はフィニッシングだ。12年のジーンズ売上高は6億ドル、21年には2倍になる見込みだ。
劣悪な環境で延々と作業
ホーチミン郊外の工業地区にある壊れかけた倉庫で、200人ほどの若いべトナム人が働いていた。蛍光灯がついていても薄暗く、気温は37度を優に超えていた。大型扇風機が回っていても効果はなかった。
金属製のテーブルと台車に積み上げられた未加工のジーンズを、Tシャツとズボン(普通はジーンズ)に膝までのゴム長靴を履いた青年たちが、2つの巨大な洗濯機に押し込んだ。床に深さ3センチほどの濃紺の水たまりができた。素手で作業しているため手が黒っぽく染まっていた。
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1キロ(ジーンズ3本)処理するのに必要な水は旧式の洗濯機で20リットル近く、もう少しましなもので1キロに対し4リットル程度。ガイドの話では、メーカー側は「無駄遣いと承知している」という。
「メーカーにとって重要なのは洗い加工で、地球のことじゃない」と、ジーンズ事情に詳しい人物は私に言った。
作業場では若い男女がジーンズの膝や太ももの部分にやすりをかけていた。デニムのくずを吸い込まないよう医療用マスクを着けている人もいたが、ほとんどは着けていない。
作業のペースは驚異的で、新品のジーンズが1分足らずではき古したみたいになった。大変な集中力だった。1つミスをするたび給料から差し引かれるのだ。私が訪れた頃は作業員1人が週6日、1日400本以上を処理していた(残業分は別)。
手作業ではなく機械を使うとぺースはさらに速かった。1人の女性が(マスクなしで)ガラスが砕けそうな音を立てている巨大な歯科ドリルのような代物を使って、ショートパンツを加工していた。前後のポケットと裾を削り、いい感じに穴を開けるのに10秒。1分間で6本。それを一日中続けるのだ。
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こうした事情は中国・広東省の新塘にあるウォッシュハウスでも全く変わりないようだ。「世界のジーンズの中心地」こと新塘では、20万人の労働者が年に3億本のジーンズを生産している。1日につき80万本のぺースだ。工場や加工場の数は3000に上る。
汚水処理施設が数年前に閉鎖されて以降、染料を含む工場からの排水は直接、珠江の支流に流されている。おかげで川は濁り、生き物は死に絶えた。環境保護団体グリーンピースの報告によれば、川床には高濃度の鉛や銅、カドミウムが堆積しているという。
街路は青い色のほこりにまみれ、労働者には皮膚の発疹や不妊、肺の感染症といった健康問題が多発していると伝えられる。