最新記事

ファッション

私たちが大好きなジーンズは、東南アジアの劣悪な環境で作られている

The Real Cost of Your Blue Jeans

2019年10月09日(水)17時30分
デーナ・トーマス(本誌ファッション担当)

ニッチな繊維だったデニムに転機が訪れたのは1870年代。

仕立て屋のヤコブ・デービスが織物類の卸売りをしていたリーバイ・ストラウスに助けを求めた。金属鋲で補強した作業用ズボンを大量生産したいが特許取得に必要なドルが払えない。共同経営者にするから代わりに払ってくれないか──。こうして誕生したのがリーバイ・ストラウス社。今もジーンズの大部分をデザイン・販売する、史上最も成功した衣料ブランドの1つだ。

実用からファッションへ

jeans04.jpg

映画『あばれもの』(1953年)でリーバイスのジーンズをはいたマーロン・ブランド ALAIN BENAINOUSーGAMMA-RAPHO/GETTY IMAGES 

1970年代、ジーンズ人気に意外な形で火が付いた──それもファッションストリートと呼ばれる、ニューヨーク・マンハッタンの7番街からだ。

女性解放運動とカジュアルファッションブームを受け、ニューヨークのデザイナーたちはデザイナージーンズというジャンルを考案。「ジーンズはセックスだ」とカルバン・クラインは言った。「タイトなほど売れる」

そこでクラインは80年、当時15歳の女優ブルック・シールズ をCMに起用。「私とカルバン (ジーンズ)の間に何があるか知りたい?」ジーンズとシックな色のブラウスを身に着けたシールズは脚を大きく開き、幼さの残る声で甘くささやいた。「何もないわ」。

CMはあまりに挑発的ですぐ放映禁止になったが、既に魔法は効いていた。クラインのジーンズはCM放映後1週間で40万本、その後は毎月200万本売れた。ジーンズの販売本数は81年だけで5億本に達した。

jeans03.jpg

ブルック・シールズを起用して話題を呼んだ80年のカルバン・クラインの広告 THE ADVERTISING ARCHIVESー ALAMY/AFLO

70年代まで、相当な数のジーンズが防縮加工していない硬いデニムでできていた。柔らかくするにははきまくるしかない。なじむまで丸6カ月。2~3年で裾やポケットの縁が擦り切れてくるか、膝の部分に穴が開く。布地は色あせて「ヒゲ」と呼ばれる筋状のはきジワがつく。最高にかっこいい状態にするには時間も手間もかかった。

だが 80年代にストーンウォッシングが普及。未加工のジーンズを工業用洗濯機に放り込み、軽石と一緒にデニムが擦り切れるまで回す。さらに酸やサンドペーパーややすりを使い、はき古した感じを出す場合もあった。「フィニッシング(洗い加工)」と名付けられたこれらの作業は「ウォッシュハウス」という広大な加工場で行われた。今では1日何千本ものジーンズの加工がウォッシュハウスで行われる。

ロサンゼルスなどの一部のウォッシュハウスは技術が非常に高く安全・環境基準も厳しいが、多くはそうではない。その一例を私は昨年4月、蒸し暑いべトナムのホーチミン市で目の当たりにした。

【参考記事】「邪悪」フォーエバー21破産でも、ファストファッション自体は健在

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    「男性に守られるだけのヒロイン像」は絶滅?...韓ド…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    韓国のキム・ジヨンに共感する、日本の佐藤裕子たち..…

  • 4

    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…

  • 5

    韓国Z世代の人気ラッパー、イ・ヨンジが語った「Small …

  • 1

    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…

  • 2

    タンポンに有害物質が含まれている...鉛やヒ素を研究…

  • 3

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 4

    「ショート丈」流行ファッションが腰痛の原因に...医…

  • 5

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ヨルダン皇太子一家の「グリーティングカード流出」…

  • 2

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 3

    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…

  • 4

    キャサリン妃の「結婚前からの大変身」が話題に...「…

  • 5

    韓国Z世代の人気ラッパー、イ・ヨンジが語った「Small …

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:トランプ新政権ガイド

特集:トランプ新政権ガイド

2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?