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私たちが大好きなジーンズは、東南アジアの劣悪な環境で作られている

The Real Cost of Your Blue Jeans

2019年10月09日(水)17時30分
デーナ・トーマス(本誌ファッション担当)

フィニッシング済みの製品は世界のジーンズ市場を牽引する一方で、環境と人々の健康に大きな被害を与えてきた。だがこの技術革新の時代、何か策はあるはずだ。

スペインのバレンシアに本拠を置くデニム業界向けコンサルタントのホセ・ビダルと甥のエンリケ・シジャは「ジーノロジア」というクリーンで安全な3段階の加工プロセスを開発した。まず、砂ややすりで表面を削ったり過マンガン酸カリウムで漂白する代わりにレーザーで加工 を行い、化学薬品の代わりにオゾンで色をあせさせる。最後の仕上げを行う洗濯機「eフロー」の水の使用量は、従来のものより90%少ないという。

これまで1本のジーンズの加工には平均して68リットルの水と1・5キロワットのエネルギー、140グラムの化学薬品が使われてきた。だがジーノロジアを使えば、エネルギー消費は33%、化学薬品の使用量は67%減らせる。水についても最大限、効率的に使えば使用量は全体で71%削減でき、ジーンズ1本当たりグラス1杯の水で足りるという。

新技術が雇用に影響?

シジャはシステムが稼働している様子を見学させてくれた。レーザー室では新品のジーンズが10~11秒で、3年はきこんだ私の防縮加工なしのリーバイス501と同じくらい色あせ、着古した感じになった。

次に乾燥機を思わせるタンブラーにジーンズを入れ、オゾンを使ってさらに退色加工を行う。たった20分間で「1カ月間、日光に当てたような」効果が得られるとシジャは言う。

最後に見せてもらったのは洗濯室。eフローのごく微細な泡で洗うことで「柔らかさと色合いのニュアンスが加わり、ストーンなしでストーンウォッシュ加工したような効果が得られる。それも一度にだ」とシジャは言う。使った水の浄水処理は行わないが、30日間、繰り返し使うことが可能だという。

ホーチミンでも私は、ジーノロジアを導入したウォッシュハウスを見学した。生産量は中国の大規模施設の半分程度だったが、ジーンズをゴシゴシこする必要もなければうるさいヤスリの音も聞こえないし、灼熱の作業環境とも無縁。案内役は「完全に生産の在り方が変わった」と話していた。将来的な雇用への影響は否定しなかったものの、現時点では「もっと高度な装置や管理部門」への配置転換により、雇用を維持しているという。

そんなジーノロジアも、ジーンズ加工市場への参入には苦労している。状況を変えるカギを握るのは、やはりGAPやH&M、ザラ、ユニクロ、リーバイスなどの大手が本気でこうした技術を取り入れるかどうかだ。

こうした大手のジーンズ製造法を根底から変えることができたら、その結果はとてつもなく大きなものになるだろう。

【参考記事】インドの不平等の特殊さを描くドキュメンタリー『人間機械』


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※10月15日号(10月8日発売)は、「嫌韓の心理学」特集。日本で「嫌韓(けんかん)」がよりありふれた光景になりつつあるが、なぜ、いつから、どんな人が韓国を嫌いになったのか? 「韓国ヘイト」を叫ぶ人たちの心の中を、社会心理学とメディア空間の両面から解き明かそうと試みました。執筆:荻上チキ・高 史明/石戸 諭/古谷経衡

[2019年9月24日号掲載]

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